2023年5月から新型コロナ感染症はインフルエンザと同じ5類感染症に位置付けられました。
そして、それから1年間での新型コロナでの死者数は約3万2000人で、インフルエンザによる死者2244人の15倍にのぼることも発表*1されました。
▼コロナはなぜ夏にも流行▼
これを見たら通常の思考ができる人は「コロナはただの風邪」なんて言えるはずないですね。正確にはかぜ症状を呈する厄介な感染症です。
さて、コロナでは死者数もさることながら、10%以上の確率で発生する後遺症の問題もあります。
今回は、コロナ後遺症の新たな発見*2を見ていきましょう。
過去記事の復習
さて、当ブログでは過去に幾度となく、コロナ関連の記事を書いております。
その中で、コロナ後遺症に関するものを復習しておきましょう。
新型コロナウイルスは2003年にあったSARSウイルスの親戚とされております。
で、そのSARSに感染した人は長期にわたり後遺症を示しております。
中国の病院からの報告*3では感染後18年経っても倦怠感が消えなかったり、骨粗鬆症になったり、肺には異常陰影が残るなど見られています。
こういったことから、親戚である新型コロナでもひょっとしたら後遺症はかなり長期になるかもしれないとも言われています。
▼SARSから知る後遺症問題▼
新型コロナ後遺症(PASC)について調べてみると、倦怠感や認知機能低下などが見られ、そのQOLはなんと肺癌Stage4よりも低い*4のです。
ちなみに、新型コロナワクチンを感染前に1回でも接種している人は、後遺症リスクは20~40%低下することも世界中の研究から報告*5*6*7されています。
▼後遺症は肺癌以上?▼
超感度検査
今回のアメリカからの研究では、706人のコロナ既感染者の血液サンプル、全1569検体を用いて調べたものです。
そして、開発した超感度検査を用いて、新型コロナウイルス由来のタンパク質を調べました。
すると、後遺症症状を訴える被検者の血液内には、後遺症のない被検者の血液と比較して2倍近いコロナウイルス関連タンパクが見つかったのです。
後遺症症状で多かったのは、倦怠感、思考停止、頭痛、関節痛、睡眠障害、消化器症状、味覚障害などでした。
特に後遺症を訴える被検者の43%は感染してから1~14か月の時点でもコロナ関連タンパクが血中から検出されました。
一方で、特に後遺症なしの被検者では感染後1~14か月の時点でコロナ関連タンパクが検出されたのはその半分の21%だけでした。
要は、コロナウイルスをうまく排出しきれずにしばらく体内に残ることが示唆されており、その残存期間が長いと後遺症が長くなりやすいということを予期させます。
これについては、過去記事でカリフォルニア大学の研究*8や岡山大学の研究*9内容をご紹介しました。
▼ウイルスが体内に長期残存▼
岡山大学の論文のgraphic abstract を見るとわかりやすいですが、青色のグラフは後遺症なく回復した人のウイルス量です。
10日未満でウイルス量は完全に0になっています。
しかし、重症化した人(赤い線)や中程度の症状(黒い線)の人たちは一度下がるけど、完全に排出しきれずに体内に長く残っていることがわかります。
これが後遺症にもつながるのではないかと考えられます。
他にも原因が
話は戻って、さきほど長期後遺症症状を訴える被検者で、コロナウイルス関連のタンパクが検出されたのが43%と書きました。
ということは、長期後遺症を訴える患者でも半分以上(57%)の人は、感染後1か月以降ではコロナ関連タンパクは検出されていなかったのです。
となると、他にも後遺症の原因があると考えるべきです。
例えば、感染時にコロナウイルスが免疫系を大きくかき乱したことにより、ウイルスが体内から排除された後(超感度検査で陰性に)でも影響が残っているというのが1つです。
免疫系統の混乱で、体内に潜伏していたEBウイルスが再活性化するという説*10もありましたね。
他にも後遺症患者ではコルチゾールが低下しているという報告*11やコロナ感染による微小血栓も原因の1つかもしれない*12と言われています。
▼不思議の国のアリス症候群▼
持続感染説の研究
さて、体内に長期に残存する新型コロナウイルスが後遺症の原因の1つとして、大規模な研究もされています。
そして、どのような人が持続感染を起こしやすく、つまり後遺症のリスクが高いのかについても調査をしているところです。
また、この『持続感染説』が正しく、コロナウイルスの持続感染により後遺症が引き起こされているとわかった場合、次の段階は治療法の確立になります。
体内に残るウイルスを排除すればいいので、抗ウイルス薬がカギとなると考えられます。
ご存じの通り、新型コロナウイルスには現在複数の抗ウイルス薬が存在します。
しかし、残念ながら、直近の研究*13でもコロナ後遺症の治療薬としてはあまり期待できなさそうです。
細菌は生物なので、抗生剤で殺すことができます。
一方で、ウイルスは生物ではなく、抗ウイルス薬で”殺す”ことができないのです。
抗ウイルス薬は、ウイルスが我々の細胞を乗っ取って増殖し、細胞外へ飛び出すのを阻害するのです。
つまり、感染急性期のウイルスの増殖を止めれるが、今いるウイルスの排出を促すことはできないということです。(自身の免疫が排出を頑張る)
だからこそ、効果的なワクチンがあれば、それで予防できるのが現時点では一番の理想なのです。(残念ながら”予防効果”はオミクロン株以降は正直厳しいです。。。)
似たウイルスは?
感染後も体内に残存するウイルス・・・
何もこれはコロナ特有のものではありません。
エボラウイルスやジカウイルスでも同様の経過がわかっています。
そして、ヘルペスウイルスも子供のころに感染したものが、ずっとリンパ節に潜んでいますね。
帯状疱疹の原因となるのは小児期の水痘(水ぼうそう)ですね。感染後もウイルスが潜んでいて、何十年も経って、ストレス、免疫低下、がんなどなどにより急に暴れだします。
▼帯状疱疹が増えている理由▼
帯状疱疹は毎年増えてきていましたが2015年を期に急増しています。
コロナワクチンはこのときありませんから、関係ないですよ!笑(釘差し)
2014年から子供の水痘ワクチンの定期接種が開始したのです。これにより水痘になる子供が減少しました。
今までは、周りにいる子供らが水痘にかかってそのウイルスを排出していたので、それに曝露され、その都度免疫ブースターされていたのが、水痘の子が減ると、そのブースターの機会が減り、高齢者を中心に帯状疱疹が増えています。
そもそも水痘にかからなければ帯状疱疹にはならないので、長い目で見るといいことです!
さいごに
いかがでしたか?
オミクロン株に移行後、急速な重症化をきたす症例の減りました。
しかし、ジワジワと体力をむしばみ、食事摂取ができなくなり、お亡くなりになる高齢者は多いです。
死者数を見ても、インフルエンザとは比にならない数です。
そして、後遺症患者も10%以上の確率で発生しており、非常に厄介な感染症です。
色々と原因については研究されており、今回ご紹介したものでは、体内に持続感染しているというものでした。
5類移行後、見えなくなりましたが、”流行期”にはみなさん警戒度を上げた方がよさそうです。
では、また(^^♪
*1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/362370
*2:https://scitechdaily.com/unmasking-long-covid-scientists-discover-hidden-viral-culprits-in-blood/
*3:https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S2589-5370%2823%2900061-5
*4:https://www.theguardian.com/society/2023/jun/08/long-covid-impact-quality-of-life-cancer-study
*5:https://www.cambridge.org/core/journals/antimicrobial-stewardship-and-healthcare-epidemiology/article/effectiveness-of-coronavirus-disease-2019-covid19-vaccine-in-the-prevention-of-postcovid19-conditions-a-systematic-literature-review-and-metaanalysis/0AD0EDEC8C9CC9DF455752E32D73147B
*6:https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(22)00354-6/fulltext
*7:https://bmjmedicine.bmj.com/content/2/1/e000470
*8:https://medicalxpress.com/news/2024-03-covid-virus-stay-body-year.html
*9:https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(22)00995
*10:https://www.mdpi.com/2076-0817/10/6/763
*11:https://www.nature.com/articles/s41577-023-00958-7
*12:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34442710/
*13:https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2819901#google_vignette