マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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『実質〇〇円』の心理学に迫る

ネットショッピングや、携帯の通信料などでもしょっちゅう見かける『実質○○円』という謳い文句。

ポイント還元やら、ようわからんキャンペーンやらで後で還元されて安くなるのでしょう。

そんな御託を並べずに最初から販売価格値引きでええやん!という心を諫めて、このようなサービス形態をする意味合い*1*2を学んでいきましょう。

販促の違い

リアル店舗での販促というのは、通常販売価格と期間限定のセール価格という2つの価格を設定するのが普通です。

最近では、ポイント戦国時代のあおりもあり、リアル店舗でもポイントが貯まることが重要視されています。ま、日本ほど共通ポイントがたくさんある国も珍しいわけで・・・( (^^;;)

そして、ポイントは買い物のときにつくだけでなく、購入後にポイント還元というのもありますね。

この方式はもともとネットショッピングで主流な方法でした。

とりあえず定価で買ってもらって、後で還元することで、今回は使えない(=割引にはならない)が、次回以降の買い物で使えますとして、次の買い物を促す方法です。

購入時に割引で買うのと、後に割引相当分をポイントで還元される・・・

この2つは同じようで、実は違うので、見ていきましょう。

どっちが得?

たとえば、1万円の商品について考えてみましょう。

A店では、セール期間に20% off として、8000円で販売することにしました。

B店では、期間中に買うと20%分のポイント還元をすることにしました。

購入者のお金の減りを考えると、どちらも8000円がその商品に使われたことになり、同じようになります。

しかし、店側の視点で見ると、割引率が実は違うのです。

実は割引率が違う

A店の割引率は誰でもわかる20%ですね。問題はB店です。

上図をよく見てください。

このお店では、客からは1万円で購入してもらっています。で、2000円相当のプレゼント(2000pt)を無償で提供するわけです。

つまり、客が手に入れたのは1万円の商品と2000円分のプレゼント、合わせて1万2000円相当になります。それを1万円で買ったので、割引率は…16.6%ということになります。

つまり、ポイント還元よりも、現金割引の方が得と言えるのです。

また、ポイント還元では、そのお店とか共通ポイントでのお店でしか使えませんが、現金値引きで浮いたお金はどこでも使えるというのも違います。

浮いたお金で帰りにポイントが使えないお店でご飯を食べて帰ることもできます。

新規顧客とリピーター

では、お店側はどういう風にこの2つの方法を使い分けているのでしょうか?

現金値引きについて考えると、「前から欲しいな~、でも少し高いな~」という人に、今なら20%off!!となると、買っちゃいそうでしょ?

はい、現金値引きは新規顧客獲得に向いているのです。

20%引きにしても、新規顧客が増えること、そして今後その人たちの一部がリピーターになることを考えると、安い宣伝費になるわけです。

それぞれの得意分野

一方でポイント還元は、次回利用へのモチベーションにつながります。

例えば、その系列のお店”限定”だったり、期間"限定”のポイントだったり、という縛りを作ることで、次もそこでそのポイントを使うために買い物をしてくれるという、いわば、知らんうちに客を誘導できるわけです。

実際、私も楽天経済圏の人間ですから、同じ商品買うなら楽天で買うわけです。はい、ただのカモです。笑

ポイント還元の強み

ポイント還元には、もう一つメリットがあります。

それは、客が増えても固定費が変わらない業務形態に適しています。

例えば、パン屋さんなどの作って売るパターンの場合、販売を増やすと材料費などの固定費は当然増えますね。

一方で、レンタルDVDとかのお店は、借りる客が増えても固定費は変わりませんよね。

ポイント還元の恩恵を受けやすい業種

こういうとこで、ポイント還元でリピート率が上がれば利益がどんどん増えます。

他にも客が増えても固定費が変わらないもの・・・

そう公共交通機関もそうです。定期運行の固定費は客の数によらずほぼ一定です。

飛行機のマイルや、交通系ICカードでも最近はポイントバック増えてますよね?これですな。

保有効果

最初に書いたように、実はポイント還元よりも現金値引きの方がお得なのです。

しかし、店側だけでなく、実は購入する客の側もポイント還元を好んでいるようです。(特に日本人は異常なほどのポイント好きなそうな)

心理学の中に保有効果というものがあります。

保有効果とは

人は自分が所有しているものに対して、比較的高い評価を与え、手放したくないと考える傾向にあります。

ショッピング後に、スマホアプリを見ると、ポイントが還元され貯まっていく・・・

そして、自分が”保有”するこのポイントに対して実際以上の価値を見出すのです。長年保有してきたものは愛着があるでの捨てるのにかなり勇気がいりますよね。それですね。

持続ハピネス・・・

つまり、500円現金値引きされたときは、その時だけ得した気分になりますが、ポイント還元で500pt付与されると、それ以降も”保有”するので、500円以上の価値を継続的に感じてしまうという『保有効果』が持続するのです。

そして、いつしかポイントを貯める行為自体が”喜び”になり、ポイント自体を使い惜しむようになるのです。

選考の逆転

ポイントを貯めることは、経済学的には非合理的です。

ポイントを貯めても金利はつきません

貯金するならポイントではなく、お金を銀行口座に入れた方がいいです。(ま、金利クソ低いですが。)

ポイント貯金は非効率

例えば、1000円貯金するには1000円札1枚で済みますが、ポイントで1000pt貯金するには還元率にもよりますが2万円〜10万円買い物をしなければいけません。

効率が悪いんです。

このように非常に不合理なことをやっていることを、行動経済学”選考の逆転”と呼びます。

有名な例は、松・竹・梅弁当です(笑)

例えば、下図でスタンダードとスペシャルの2種類のコースを準備すると、多くの人は、「まずはスタンダードにしよう」となります。

ところがここに、さらに高いロイヤルコースを設定すると、どうなるか・・・

多くの人は、「とりあえず真ん中のんにしようかな」とスペシャルコースを選ぶようになるのです。

選考の逆転とは

つまり、お店側が”誘導”して、一番利益率の高いものを真ん中に設定するわけです。

こうすると、2種類しか設定していなかったときは客単価3000円だったのが、ロイヤルコースを入れるだけで客単価が5000円になったのです。

店としてはロイヤルコースなんてダミーで、一番売りたいのはスペシャルコースです。

さらに、そんなに力を入れていないロイヤルコースも注文してくれれば、単価8000円ですから儲けもんと。

お弁当などで松・竹・梅と3つ設定されているのもそういう理由です。

理由付け

人間は誰しも、自分が間違った選択をしていないと信じたい心があります。

普段なら買わない高いものを買った時も…

誰もが持つ”自己保身”

このように自己保身の理由を付け正当化します。

ポイントを貯めるのも非合理的とわかりながら、保有効果もあり貯めているのにも理由を付けます。

これは買い物でもらえる”おまけ”を貯めているので合理的なものだと。

しかし、実際は・・・

ネットショッピングでセール期間にポイント◯倍!!とかありますが、あの期間はそもそもの定価が上がってるときもあります。

定価が上がっていることも・・・

でも、還元率が高いという言葉により認知を歪められ、普段の方が安いかもしれないけど、ポイントをたくさんくれるから買ってしまう。

そして、その時に、普段なら買わないけど、還元率高いから買っとこう!と余分なものも買う・・・

まんまと罠にハマっているのであります(笑)

二重価格表示のルール

ちなみに、セールでポイント還元でなく、『半額セール』などの場合は、直前4週間使われていた額から半額でないといけません。これは消費者庁が定めた二重価格表示のルール*3で規制されれています。

なので、ポイント還元で値上げは問題ないんですな、多分。なるほど。

さいごに

現金値引きが一番お得ですが、今まで見てきたようにポイント還元に力を入れているところが多いです。

となると、我々もそれを受け入れなければなりません。

とりあえず、ポイントの【保有】はよろしくないので、早めに使いましょう。

ポイントを貯めることが目的になってしまうと、元も子もありません。

あのお店ならポイントが多くつくからそちらまで!となっても、その移動によるガソリン代を考えたら損していますよ!なんてこともあり得ますしね。

 

・・・ということらしいです、はい。

 

あ、今から”お買い物マラソン”や!ほな楽天市場へ行ってきます(笑) 

では、また(^^♪