国内でもまた新規陽性者数が増えています。これの主な原因は気温低下と湿度低下です。メディアはそこに Go To キャンペーンを無理やり絡めてきますが、それならば開始時からもっともっと増えてますわな!(笑)
もちろん、人の接触を増やしたという意味では正しいですが。
一方で自殺者が増えてることも忘れては行けません。自粛が進むと、、
いずれにせよ個人レベルでしっかり手洗いと人ごみでのマスク着用はもう一度自分に言い聞かせましょう。
さて、今回は一つの「希望」ともいえるニュースがあったのでそれを少し書いてみます。
今日のニュース
それではいつものように英字記事をサクッと読んでみましょう。緑字の it が何を表しているのかを意識しながら読んでみてください。
本文について少しだけコメントしていきます。
まず it から行きましょう。1つめの it は何でしょう?もう文脈がわかれば余裕ですね、COVID-19 vaccine ですね。これは問題ないでしょう。
では2つ目の it は何でしょうか?僕自身はこの it 自体が誤りだと思っています。本来なら they にするべきです。Pfizer and BioNTech の2社のことです。共同研究しているから1つの研究グループという意味で単数にしてるのかもしれませんが、文法だけで考えると they が正しいですね。
some time soon(近いうちに)という表現はぜひ押さえておきましょう。本文ではそれの否定で not any time soon となっています。
あと個人的に気に入ってる新聞らしい婉曲の書き方が、黄色下線部です。リスクの高い人とストレートに書かず、『政府が、最も(ワクチンが)必要と考えられる人たち』としているところも味わって読んでください。(笑)
『90%以上に効果アリ』
さて、このニュースを見られた方はどういう風に思われたでしょうか?9割の人に効果ありというのは嬉しい響きですね。インフルエンザワクチンの効果は50-60%(2017年報告)とされますからそれ以上ということになります。
▼インフルエンザワクチン▼
ところでこの90%以上って数字はどこから来たんや?と思われる方もいると思いますので、まずそこからなるべくわかりやすく解説します。
『90%』はどこから?
まず会社の名前ですが Pfizer はドイツ語やった方はわかるともいますが、最初のpは発音せず、ファイザーで、米企業です。BioNTech はビオンテックといいます、こちらは独企業です。それぞれの名前だけ見たら米独が逆なのじゃないかと思うくらいですね(笑)
さて、過去の記事でもやりましたが、世界中の大手製薬会社はコロナワクチン開発を行っており、イギリスのアストラゼネカはオックスフォード大学と共同研究していることも過去にブログで扱いましたね。いわば、今後の『金の成る木』なんです。
世界中で約4万4000人が参加したこの治験の内容を簡単に図にしてみました(↑)。
こういう試験では二重盲試験と言って、参加者も医師もその人がどちらの群に入っているのか治験終了までわからないようにして行います。いわゆるプラセボ効果を無くすためです。
今回開発中のワクチンは3週間あけて2回打つことになっていますので、治験ではどちらの群も同様に行っいました。
そしていよいよそのデータを解析し始めました。すると、94人のCOVID-19陽性者がいたため、その人たちがどちらの群だったのかを調べてみました。
正確に何人と何人かは見つけられなかったのですが、私の勝手な推測で図を作っています。(笑)
例えば、9人がワクチン群、85人がプラセボ群だったとしましょう。すると、9÷85=0.105… なので約10%ですね。
つまり、ワクチンを打っていた人はプラセボの人と比べて陽性となった数は10%、裏を返せば、ワクチンによって90%の人が予防されたということになります。
安全性はどうか
ワクチンというのは予防効果とともに安全性も重要です。いくら予防効果が高くても、ワクチンにより命を落としたり、別の病気になる人が続出しては困るわけです。
以前も書きましたが、このような安全性の確認・解析などにも時間がかかるため、通常ワクチンの開発には少なくとも5年以上かかります。今回は1年以内での完成を目指しているという異例な状況です。(だからといって安全性を軽視しているとは言ってません・・・)
いろんな記事から世界の学者の人らのコメント簡単にまとめてみました。要は、基本的には「まだまだあわてるな、完全なデータではない」という意見が大多数です。
安全性については11月末くらいには結果がまとめられそうです。
これから先
さて、安全性の解析が終わり、問題なかったとなれば、アメリカ国内での緊急承認を申請することとなるでしょう。アメリカはとてつもない感染者数と死者を出しているので効果があるなら一刻も早く使いたいといったところです。
新薬のときもそうですが、日本は基本的に様子見から始まるので、アメリカでの使用開始後の状況を見てから、国内で承認するのかな~と思います。
日本は、安倍政権の時にファイザーとも契約してますし、アストラゼネカとも契約していますので、ワクチンが出回った時は比較的早い段階で打てる準備はできています。
インフルエンザのワクチンは鶏卵でウイルスを増やして作る方法なので、短期間で大量生産は得意ではありません。
しかし、今回のファイザー社らの方法は、mRNA*1と呼ばれる遺伝子コードを採取してそれを脂質内に閉じ込めたものです。つまりウイルスそのものではなく、その遺伝子を使うので、人工的に大量生産ができるのが特徴です。年末までに5000万回分作れるそうです。
体内に入るとワクチンが細胞内へ侵入し、それによりT細胞などの免疫系が賦活され抗体ができるという仕組みです。
やはりあった高い壁
しかし、物事はそう簡単には進まないもので。
実はこのワクチンは流通に難点がありそうなのです。保管温度が-70~80℃以下なんです。インフルエンザワクチンは冷蔵庫で保存です。
製造工場から飛行機で各国へ、そしてそこから貯蔵施設への移動、また医療機関への移動などこれらの行程で超低温を保つことができるのかという問題です。
最近の英字記事を見ているとこれらの流通過程のことを cold chain と呼んでいますのでそれも押さえておきましょう。
アメリカで超有名な Mayo Clinic(メイヨークリニック)ですら、「そのような貯蔵庫はない」と懸念を出しています。
他のワクチンは?
実はアメリカのModerna社もファイザー社らと似たような方法でワクチンを開発しています。しかし、こちらはここまでの超低温保管の必要はないとしています。
Johnson & Johnsonで開発中のワクチンも冷蔵保存で2~8℃としています。
ファイザー社らとしては他の会社が追従してくると、この超低温保存が原因でワクチン戦争で負けてしまう可能性があるんです。となると、なによりも世界初*2の承認ワクチンを真っ先に出すことが使命となっています。
ファイザーは、通常の冷蔵保存の2~8℃でも5日間保存がききますと言っています。5日間をどう見るか・・・
さらには、これからその冷蔵保存でもっと保存がきくか調べてみますとも言っているので、やはり追いかけてくる他社を意識していますね。
最後に
しつこいですが、今回のワクチン開発は異常なまでに世界中で過熱して、どちらかというとスピード重視です。もちろん安全性のデータで問題がないとわかればよいのですが、国民としては不安な気持ちは残るでしょう。
医療での一般的な考えはリスクとベネフィットがどちらが大きいかです。どんな薬でも副作用はあります。例えばアメリカやブラジルのように感染拡大の歯止めが効かないような状況であれば、よっぽどの危険なものでなければワクチンを打つ方がベネフィット多いですね。
日本はどうでしょうか?死亡者数はインフルエンザの毎年の数より少ないですが、これをどう見るのか。
今の状況で、日本が真っ先に手を出す必要はないと思います。いつも通り、アメリカや先進国でのデータを待ってからという慎重な姿勢でもいいと思います。
しかし、東京オリンピックを考えると、政治的理由がそれを上回るかもしれませんね。
では、また(^^♪