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【サク読み】子供の原因不明の肝炎

欧米を中心に子供に起こる原因不明の肝炎が出現しています。先日、1人の死亡が確認された他、肝移植が必要となる子供たちも出てきています。

そして、ついに日本でも症例が見つかったようです。

今回はこの原因不明の肝炎について学んでいきましょう。

原因不明の肝炎

まずは、状況をおさらいしておきましょう。

WHOの報告*1では、4月23日時点で、世界11か国で169件の『原因不明肝炎』の報告が出ているそうです。

生後1か月~16歳の子供たちに起こっており、症状としては腹痛・下痢・嘔吐から始まり、重症化していくようです。熱は出ないようです。

小児の原因不明肝炎

1人が死亡、17人が肝移植が必要な状態となっています。

数は少ないですが、子供たちの下痢・嘔吐を見たらヒヤッとしますね。

通常、肝炎の原因はウイルス感染、アルコール、薬剤性、自己免疫があります。

肝炎の主な原因

年齢的に長期のアルコール摂取はないでしょうし、薬剤の使用もあれば、最初からそれを疑うはずです。また、英国の調査報告では新型コロナワクチンは全員【接種なし】であり、無関係*2とわかっています。

自己免疫性肝炎であれば採血で自己抗体を調べればわかります。

ということは、やはりウイルス性が一番濃厚でしょう。

肝炎ウイルス

肝炎を引き起こす肝炎ウイルスはA~E型の5つが主です。

そのうち、B・C・D型は血液を介してや、性行為によって感染します。有名なのはB型肝炎とC型肝炎ですね。これらは慢性肝炎となって、のちのち肝硬変→肝細胞癌となることがあるので特に注意が払われています。

血液製剤や注射針の使いまわしで過去に感染が広がりましたね。

肝炎ウイルス

一方、A型肝炎ウイルスやE型肝炎ウイルスは食べ物からの感染があり、貝類や豚、鹿などの生食が原因となります。

しかし、今回の子供たちはこれらの肝炎ウイルスは検出されませんでした。

ノロウイルスとカキ

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アデノウイルス

実は、肝炎ウイルス以外にも肝炎を引き起こすウイルスが知られていて、サイトメガロウイルスやヘルペスウイルス、麻疹ウイルスなどからも肝炎になり得ます。

CDCの報告*3を見てみると、実は昨年の10月頃から、米国では原因不明の子供の肝炎が見られていたのです。

2021年秋から既に症例があった

肝炎ウイルスの感染は否定され、なんとアデノウイルスに感染していることがわかりました。

アデノウイルスは夏場にプール熱を起こしたり、胃腸炎などを引き起こすウイルスです。プールに塩素が入っているのはプール熱などの予防ですね。

ちなみに、アストラゼネカ社のコロナワクチンはチンパンジーアデノウイルスを利用しています。しつこいですが、”ワクチン接種なし”ですから関係ないです。

今回の子供たちから見つかったアデノウイルスはtype41と言って胃腸炎を引き起こす種類です。

アデノウイルスが原因

すべての子供たちからアデノウイルスが検出されたわけではありませんが、CDCは現時点ではアデノウイルスが原因である可能性が高いと考えているようです。

実は新型コロナ?

英国を筆頭に欧州でも原因不明の肝炎が出ておりますが、なんとその症例を調べていくと、面白いことがわかりました。

新型コロナの影響か?

アデノウイルスと新型コロナウイルスの同時感染が見られたのです。

英国ではコロナ禍でアデノウイルス感染症が激減していましたが規制撤廃後、アデノウイルス感染が急増しています。オランダも同様です。

たまたま見つかった同時感染

WHOによると、アデノウイルス感染が急増したことで検査を積極的にするようになり、稀な『同時感染』が見つかっただけだろうとしています。

つまり、本質はCDCと同じく、アデノウイルスによる感染症と考えています。

日本でも発生

そして、4月25日、厚生労働省は日本国内でも同様の【原因不明肝炎】が報告されたと発表しました。

日本国内でも同様の症例

その症例ではアデノウイルスは検出されていません。WHOの報告でもアデノウイルスが検出されたのは約43%の症例で、すべての症例ではありません。

予防・対策

さて、現時点ではアデノウイルス関連の肝炎である可能性が高いです。

となれば、対策はいたって簡単です。

手洗いなど基本的な感染対策を

小さい子供が、劇症肝炎などで肝不全に陥るなんて非常に恐ろしい感染症ですが、できることは決まっています。

手洗いでしっかりと洗い落とすことが重要となります。

さいごに

いかがでしたか?

現在欧米で見つかっている原因不明の小児の肝炎についてまとめました。

嘔吐・下痢などから始まり、肝不全へと進み、肝移植が必要となる子も出ています。

非常に恐ろしいですが、症例をまとめたところアデノウイルスが原因と考えられており、基本的な感染対策で対応はできるだろうとされます。

引き続き、情報を追っていきましょう。

 

では、また(^.^)ノ