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本気を出し始めた日本人~緊急事態宣言による影響~

コロナのニュースで毎日あふれていますが、ヤフコメとか見ると「なんで政府は検査数を公表しないんだ!」と言った意見がものすごく多いことにそろそろ辟易としています(笑)

何度も言っていますが厚生労働省東京都などの自治体もHPで検査数も感染者数も載せています!!報じないメディアに問題があります。

news.yahoo.co.jp

さて、緊急事態宣言以降少しずつ変わりつつある?日本の状態をまた”俯瞰”してみましょう

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やっと減り始めた人出

04月07日に緊急事態宣言が発令され、初めての週末を迎えました。翌日などはまだまだ通勤電車は満員でしたが、日に日に減っていると皆さんお感じかと。

実際に、JR西日本の発表では昨年同時期と比べ山陽新幹線の利用は83%減在来線は66%減と言うことです。

以前の記事で緊急事態宣言ではそれほど大きく変化はないと説明しました。実際そうなのですが「国民の心」には大きな変化を生んだようです。

緊急事態宣言についてはコチラ

www.multilingual-doctor.com

 

なぜ8割減?

さて、緊急事態宣言で出てきた「行動8割減」という目標ですが、これはどうやって考えられたのでしょう?適当に作ったわけではありません。

次の図を見ながらわかりやすく説明します。

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これにはまずR0(基本再生産数)という考えを知る必要があります。これは一人の感染者から何人の人に感染させるかを表します。

そしてこのR0が1を切れば感染は次第に収束します。なので、その計算をしたわけですね。つまりどのくらい人の接触を減らせば基本再生産数が1を切るのか。。。

今までの活動率を100%として「自粛後の活動率」を何%にすればRe(自粛後の実効再生産率)は1を切るかです。単純な算数の問題ですね。

ヨーロッパで比較的うまくやっているドイツのデータを参考にし、R0=2.5で計算してみると、自粛後の活動率が40%になるとReは1を切ります。つまり活動60%減です。

ただ、ハイリスクな方で通院がmustな人たちも一定数いるし、夜の街の濃厚接触を完全に止めることはできないので、余裕を持って80%減としているようです。

感染経路不明の増加

感染者数が増えているのも心配でしょうが、感染経路不明が増えているのが問題視されています。つまり周りに陽性の人がいないのに陽性になった人が増えているワケです。

ただ、陽性で8割の人は無症状と考えられています。つまり、電車に乗っていれば咳をしてなくても感染している人が周りにいてもおかしくないわけです。

さらには聞き取り調査で、あまり公にしたくないお店に行ってたり、配偶者以外の異性と接していたりしたらちゃんと報告しているでしょうか?ま、該当は少数(だと願う)でしょうがね。

www.sankeibiz.jp

 

感染者数が増えたが・・・

はい、今日も厚生労働省さんの公開してるデータを見て学びましょうね。

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厚生労働省HPより 一部加筆

いつも出てくるこの表ですが、04/11 12時現在のデータとなります。まずRT-PCR検査の合計数は74,891で前日比が6,120なので明らかに1日当たりの検査数は増えています。

で、総陽性者数が6,005人ですので、陽性率は8.01%となります。過去2回の記事での数値も図に載せてみましたが、陽性率は上がってきていますね。

しかし、前から言っておりますが日本の検査のやり方(「ねずみ取り式」と勝手に呼んでます)では感染者数や陽性率だけを見て何も結論は出せません。

しかし、どうでしょうか?あれだけ検査基準を厳しくして、相当陽性が怪しい選りすぐり集団を検査しても陽性率はこんなものなのです。(偽陰性もある)

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厚生労働省HPより 一部加筆

さて、重傷者の割合は上図で計算すると2.36%, 死亡率は1.57%でした。ともに過去のブログ記事よりも低下し続けています。(重傷率:3.10→2.50→2.36%、死亡率:2.35→2.05→1.57%)

要するに検査数を増やしていることに伴い軽症者数がどんどん増えていると言うことです。想定の範囲内です。

 

日本の検査について

以前記事でも書きましたが日本では全数検査はとてもじゃないけどできないので最初からクラスターと重傷者発見に的を絞っていました。段々と民間での検査もできるようになり今検査数は増えています。それに伴い今までなら検査されないであろう人たちも少しずつ増えていることで重症でない陽性が増えているワケですね。

WHO含め多くの国に批判されまくった日本の検査方式になんとWHOが急に「うまくやっている」と言い出しました(笑)

headlines.yahoo.co.jp

もちろん課題もありますが、徹底してクラスターを捕獲してつぶしていくというのは限りある医療資源の中ではよかったのではないでしょうか。

クラスター対策班という人たちが毎日毎日いろんな状況を想定してかなり国の方針決定のために尽力しています。何も知らずに批判ばかりしているネット民の方はぜひ彼らの活動を知ってほしいです。Twittwer→ @ClusterJapan です。

 

クラスター追跡でわかったこと

そのWHOが評価した日本のクラスター追跡の結果わかったことがあります。それは日本国内での感染の広がり方です。

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クラスター対策班より

クラスター対策班が徹底的に感染集団を追いかけたところ、先ほど出てきた再生産数(この図ではRtと表記)は1.49であることがわかったのです。

つまりドイツの2.5よりも低いです。確かに日本は欧州と比較しても感染状況は軽いですよね。

この数字で計算したら日本人の接触制限はどうなるのか?はい、35%減ということになります。(小声)

今やっと官民一体となって自粛を進めているので、「4割減でいい!」とか言ってみんなの自粛を緩めるのはよくないですから、とりあえず「8割減」を目指すつもりでいいと思います。

また、最近では欧州でのウイルスと日本のウイルスは変異しており別物ともわかっています。ドイツ・イタリア帰りの人らが広めた変異ウイルスが拡散されつつあるのでこれこら感染者数は増加するでしょう・・・(;o;)

まとめ

緊急事態宣言発令以降やっと「平和ボケ」日本人が本気を出し始めた。

夜の街での感染が多いこともわかっているので「夜間自粛」が強い。

クラスターつぶしの日本の方針は現状からは理にかなっている。

しかし、今は感染者(軽症)が増えており早期にホテルなどの施設で隔離にしないと医療崩壊が目の前まで来ている。

増加している院内感染を食い止めることが重要である。

 

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