長寿というのは多くの人の夢です。
残念ながら、いつかは終わりがあるのが”生物”です。
そして、生きていくうちに老化、病気、怪我など色々起こります。
そんな中でも少しでも長生きできる可能性を高める方法はないだろうか?という話*1を見ていきましょう。
およそ80万人
CDCによると毎年アメリカで脳卒中になる人はおよそ80万人います。
脳卒中ではそのまま命にかかわる人もいれば、軽度の後遺症のみで日常生活を続けられる人などもいます。
当然、これは脳梗塞や脳出血を起こした場所やその程度に影響されます。直ちに命に係わる場所だってあります。
しかし、脳卒中になった人たちで、命が助かった人と命を落とした人を調べるとある2つの要素が関係していそうなことがわかりました。
金持ちは死ににくい
スウェーデンにある大きな港町にある、ヨーテボリ大学の研究*2をご紹介します。
ヨーテボリはスウェーデン南部に位置する大都市で、日本の大阪みたいなもんですかな、知らんけど。
真夏の8月でも最高気温は平均で22℃と、猛暑続きの我々からするとうらやましい限り・・・
さて、今回の研究では、ヨーテボリで2014年から2019年に脳卒中を起こした7000人弱の診療録を調査しました。
そして、その患者らを様々な角度から調べてみると、面白いことがわかりました。
高収入組は低収入組と比べて脳卒中後の死亡リスクが32%も低かったのです。
さらに教育面からも見てみると、高等教育組は、脳卒中後の死亡リスクが26%低いこともわかりました。
高等教育ってのは一般的には大学や短大や専門学校など、”高卒”じゃないってことですな。
医療体制や、保険の体制が違うので、日本で同じ結果になるかは不明ですし、このような研究は日本ではできません。
「差別につながる恐れがある為」ってやつですね。
スドー
研究者らはこの研究の中で、あるキーワードを使用しています。
スドー(SDoH)。
何やそれ。
SDoHは簡単に言えば、”健康の社会的要因”と言う意味になります。
この因子は大枠で4つありまして、居住地域、出身国、教育水準、収入です。
海外の医学論文などではこのような”収入”や”人種”、”教育水準”などは項目としてよく目にします。しつこいけど日本では無理です(笑)
で、話は戻って、このSDoHの項目で1つでもよろしくない項目があるだけで、脳卒中後に死亡するリスクが18%上がることがわかりました。
そして、2つ以上、よろしくない項目があると、脳卒中後の死亡リスクは24%上がっていました。
『厳しい現実』
研究者のコメントが紹介されています。
収入、教育水準など、いわゆる社会経済的地位(SES)が、脳卒中後の生き死にに大きな影響を与えていることがわかったからです。
そして、この事実はヨーテボリだけの話ではなく、欧州すべてで当てはまる話だろうと言います。医療システムが似通っているからです。
しかしながら考えていただくとお分かりの通り、学歴が低いからとか収入が低いからと言って病気になりやすいというのは直接的には関係ないです。
これは因果関係ではなく、関連性といいます。
つまり、低学歴で低収入の人たちは、色々あって結果として脳卒中後に明らかに死にやすいという事実はあったが、それらは直接の原因ではないのです。
反ワクチン人が交通事故を起こしやすいというのと同じ理論です。(笑)
▼反ワクチンは交通事故多い▼
健康格差
ここまで読んで、ある言葉を思い出しました。健康格差。
実はこの問題は昔から世界中で議論されています。で、この健康格差という言葉の専門用語こそがさっき出てきた『健康の社会的決定要因(SDoH)』なんです。
カナダ政府の公衆衛生機関では、SDoHについて詳しく解説*3しています。
地位や職業、年収、家庭環境、居住地域、地域の慣習、周りの人、教育水準、遺伝、性別・・・非常に多くの事柄がお互い関係し、それにより健康状態にも差が出てくるという考えです。
そして、先ほどのカナダ政府のサイトでは、SDoHがいかに重要かを簡単に説明するために、『ジェイソンはなぜ入院したの?』という寓話調で解説しています。
彼の家庭環境・生活環境すべてが健康に影響しているということを強調しています。
女性も死にやすい?
さて話は戻って、今回の脳卒中後の死亡率の研究では、性別についても比較しました。
すると、SDoHで好ましくない因子が2つ以上あるグループのおよそ6割が女性だったのです。
これも先ほどの健康格差の考えの通り、女性であることが直接的な原因ではありません。
例えば、まず男女の賃金格差があります。
同じ労働条件でも女性の方が年収が低い傾向にあります。男女の賃金格差はフランスでも12%ほど、アメリカでも18%ほど、日本では21%、韓国では31%と*4これだけ差があることがわかっています。
そもそもの時点で、女性はSDoH評価では不利ですね。
また、さらに低学歴であると、さらに状況は悪化します。
なぜかというと低学歴であれば賃金が低くなりやすいからです。
厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査の令和5年度*5のものを見ると、学歴別の賃金の違いが示されていますが、見れば納得です。
もちろん、中卒や高卒でも、すごく稼ぐ人もいるでしょうが、ごく一部ということがここでもわかります。
つまり、少しでも収入を増やしたいというのであれば、大学・専門学校などに進むことで確率が高まることがデータで示されています。
貧困は遺伝する
貧しい家庭に育った主人公が、大金持ちに!!なんてサクセスストーリーはなくはないですが、実際は珍しいです。
文科省が行った調査*6で世帯年収別に子供の学力を見てみると、ハッキリとそこに関連が見られたのです。
特に10歳を過ぎたころから学力には顕著に差が出てきます。
上図を見ると、国語も算数も明らかな差が出てしまっています。
国語力がないということは、きちんと文脈が理解できなかったり、論理的思考が苦手で陰謀論にはまりやすいという研究*7もあります。
貧困家庭で育つと、学力が低くなりやすく、低学歴になりやすいため、次の世代も貧困となる可能性が高いのです。(あくまで一般論ね)
となると、脳卒中になると死にやすくなるのです。
子供に教育を
この負のループを断ち切る簡単な方法は1つです。
子供に教育をしっかりとさせることです。
最近では、国も教育支援をするようになっています。幼児教育の無償化や義務教育の就学援助、高校生への奨学金などを行っています。
国立がん研究センターが今年3月に出した報告では、中卒の人は大卒の人と比べて死亡率が1.4倍高くなる*8ことがわかりました。
低学歴であれば、喫煙率が高く、塩分摂取が多いこともわかっており、おそらくはそれが主な原因です。
子供の教育はしっかりしましょう!
では、また(^^♪
*1:https://www.msn.com/en-us/health/other/new-research-suggests-that-people-with-a-higher-income-have-a-32-lower-risk-of-dying-after-a-stroke-and-those-with-higher-education-levels-have-a-26-lower-mortality-risk-post-stroke/ar-BB1mKlOF?ocid=msedgntp&pc=U531&cvid=a1dcc12912994b2c973a2fc4a2f6d301&ei=63
*2:https://www.gu.se/en/news/high-income-earners-at-lower-risk-of-dying-from-stroke
*3:https://www.canada.ca/en/public-health/services/health-promotion/population-health/what-determines-health.html
*4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD2419F0U3A121C2000000/
*5:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html
*6:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/045/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2009/08/06/1282852_2.pdf