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【サク読み】シンガポールでデング熱緊急事態

シンガポールでデング熱が!!というニュースを見た方もおられるでしょう。

今回はこの件について学んでいきましょう。

コロナ規制の緩和

まずはシンガポールの新型コロナウイルスの状況を見ていきましょう。

今年の1月から4月にかけてオミクロン株による大きな波を経験しましたが、その波もだいぶ下火になっております。

シンガポールの状況(Reutersより)

それに伴い水際対策も緩めており、海外からの入国も緩和されております。

また、同時に、国内でのコロナ規制もほぼほぼ全廃で、現在は屋内で一部マスク着用が必要になる程度*1です。

新規感染者は下げ止まっていますが、1日5人以下と死者も少ないため、元の生活に戻すという方向で進んでいます。これは他の多くの国でもそうですね。

デング熱が急増

コロナの規制を緩めると、今まで静まっていた感染症が目を覚ます。。。なんてことは見られています。

例えば、オーストラリアではすでにインフルエンザの流行が見られており、コロナとの同時流行を示しています。

www.multilingual-doctor.com

現在、シンガポールでデング熱が急増していることは、はたしてコロナ対策の緩和と関係があるのでしょうか?

『緊急事態』

CNNの記事*2を引用しつつ、解説します。

例年よりも早い大流行

そもそもシンガポールではデング熱はほぼ毎年発生するのですが、今年は例年より早くに大流行しているといいます。

いつもは6月にだんだん症例が出始めて、8月~9月頃にピークを迎えます。

デング熱が大流行

在シンガポール日本大使館の出しているグラフ*3を使わせていただきました。

これを見ると、2018年と2021年は大きな流行はなかったのですが、大体8~9月にピークを迎えていることがわかります。一方で、2022年の赤い線はかなり早い段階で急増を迎えているわけです。

気候変動が原因か

専門家たちは、この大流行は気候変動によるものであり、シンガポールだけでなく、他の国でもこの問題に注視する必要があるといいます。

気候変動による影響か

そもそも、デング熱というのは、インフルエンザや新型コロナのように人から移される感染症ではなく、蚊に刺されて感染します。熱帯地域に多い感染症です。

つまり、私たちの手洗いとかマスクとかそういったこととは関係がなく、蚊の発生に影響を受けるのです。

ただ、まぁこの数年で急に、というのはさすがに気候変動が早すぎるので今年が特段早いだけで来年は元に戻るかもしれません。

デング熱とは

すこしここで基本的な知識を学んでおきましょう。

デング熱はデングウイルスの感染により高熱、関節痛、筋肉痛などが起こります。

このウイルスは蚊が広めており、蚊に刺されて感染します。ネッタイシマカなどが有名で、熱帯や亜熱帯地域に生息しています。人から人に移ることはないです。

デング熱について

8割は無症状で、有症状でもほとんどが軽症*4とされていますが、数%の確率で重症化*5し命に関わる場合もあります。

2回目の感染の時に抗体依存性感染増強(ADE)が起こり、重症化するのではないかという仮説*6があります。

蚊に刺されないことが重要

ワクチンは存在しない為、予防は蚊に刺されないことになります。

他人事じゃない

そんな病気、聞いたことないし、東南アジアの病気でしょ!

今まではそれでよかったのです。そちらの方面に海外出張や旅行する人だけが注意する病気でした。しかし、今は違うのです。

今から8年前の2014年、東京・代々木公園で海外渡航歴のない人たちでデング熱が発生したことを覚えていますでしょうか?

実際、その時に代々木公園で採取された蚊からデングウイルスが見つかって*7います。

もはや他人事ではない

 

国際化の時代、感染症は今までにない速度で世界中に広がります。

熱帯地域でのみ広がっていた感染症も、地球温暖化により、日本でも広がりやすくなったと考えられます。

恐るべし地球温暖化。

さいごに

いかがでしたか?

シンガポールでは今年、デング熱が例年になく早い時期から急増しています。

デング熱は元々熱帯・亜熱帯地域に生息する蚊を介して感染していました。多くは無症状ですが、まれに重症化し死に至ることもあります。実際、今回の感染拡大では1人が亡くなっています。

グローバル化とともに、特定の地域の感染症も世界中に広げられるようになりました。

そして暑い国でしか流行しなかったものが、地球温暖化により他国でも定着するようになってきている。

日本でももう他人事ではなくなっているのでした。

では、また(^.^)ノ