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消費税は逆・累進課税 ~税の基礎シリーズ~

2019年に消費税が10%になり、消費の縮小を少しでも和らげるために軽減税率というシステムが導入されています。それによりあるものは10%, あるものは8%という複雑な消費税のシステムとなっています。

さて、それはそうと消費税(VAT)とはどのようなもので何に使われているのでしょうか?教養として学びましょう。

 

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日本で消費税の開始

消費税の歴史は実は結構浅いんです。平成元年(1989年)に竹下登首相のときに導入されました。最初は3%から開始されています。

さて、ここまでの経緯をものすごく簡単に振り返ってみましょう。

戦後高度経済成長期にあった日本では、『福祉』を重視していました。田中角栄首相の際に70歳以上の医療費無償化が開始されました。

ところが、1974年にオイルショックが起こり、日本の高度経済成長期は終了しました。そのときに戦後初めてのマイナス成長経済*1という厳しい中で、推し進めた高齢者医療費無償を行なうことになったのです。

これを機に、所得税、住民税、相続税などの直接税とは別に間接税を増やす方向に進んできたわけです。これにより1989年に消費税やたばこ税ができました。(※酒税は前からありました。)

オイルショックについてはコチラ

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世界の消費税率

日本の現在の消費税は2019年より10%となっています。世界を見てみるとOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均が19%なので、日本はその半分以下です。

EU(欧州連合)加盟国は消費税率は15%以上にすることが義務化されています。

アメリカでは売上税(sales tax)があります。これは消費者からしたら日本の消費税(consumption tax)と同じようなものですが、最終の消費者のみが払う点で異なります。

 

日本の消費税率の推移

平成元年(1989年)に3%でスタートした消費税ですが、その後、段階的に5%→8%→10%と増税をしていきました。

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高齢化社会で社会保障費が年々膨れあがり、国際機関などからの助言もあり消費税増税を行なうわけでありますが、政権としては「消費税増税」というのは支持率低下に直結する上、景気後退などのリスクもあるため本当は腰が重いのです。

 

逆累進課税

過去の所得税や社会保険料を振り返ってみましょう。これらは所得が多い人は税率があがる累進課税制度でしたね。※住民税の税率はみんな一定でした。

所得税についてはコチラ

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住民税についてはコチラ

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消費税はどうかというと、2020年現在は金持ちが買おうが貧しい人が買おうが消費税率は10%で同じです。もっとわかりやすく言うと1万円の商品を買うとその消費税は1000円です。

この1000円という税金は金持ちにとってはものすごくはした金額ですが、貧しい人からすれば大きな金額になります。これを逆累進制といいます。

これについては色々な意見があります。いくつか紹介すると・・・

・消費税はみんな一律10%だから公平である

・消費税の逆累進制であるため、社会保障の概念に相反する

・金持ちは消費も多いから結局消費税の総額も多いからい問題ない

 

「日本は消費税増税を」

IMF(国際通貨基金)という機関は国が潰れないように、助言を行なったり、本格的にヤバくなった国には融資したりをします。1997年のアジア通貨危機ではデフォルト*2寸前までいった韓国はIMFに援助を要請しましたね。

ちなみに日本のIMFへの出資はアメリカに次ぐ2位です。

そのIMFは日本の経済安定のための助言として「消費税の段階的増税」を挙げています。基本的には15~20%位をめざすように指示しています。つまり他の先進国レベルへの引き上げです。

OECDも日本は消費税は増税すべきとしています。

 

増税による景気への影響

「消費税増税で景気が悪くなる」

これはよく聞く話ですが、実際はどうでしょうか?ここは専門の経済学者の中でも意見が分かれています。増税前は、高額の買い物をしておこうという駆け込み需要があるため、増税直後はその反動で一時的に消費が冷え込みます。ですので、短期的に景気の流れを見るのは無意味です。

1997年に橋本龍太郎首相の際の3→5%増税時で考えてみましょう。

1997年当時の税収は総額で50兆円以上ありましたが、2011年のデータでは税収の総額は40兆円となんと10兆円以上も減収しているのです。

しかし、この1997年の後に長期に及ぶデフレがあったことと1997年に起こったのアジア通貨危機の大きな影響も受けているため消費税増税による景気後退とは一元的に言えなません。

いずれにせよ経済を語るには「増税」という1つの因子だけで「転帰」を占うことはできません。

 

所得税を上げる?

消費税増税以上に僕もいいなと思っている話があります。これは竹中平蔵氏が昔説明していましたが、所得税の問題です。

以前所得税の勉強をしましたが、所得税は収入から諸々の控除を引いた「所得」に応じて決まるのでしたね?日本人の大部分(80%くらい?だったかな)の人の所得税率は10%のところに収まります。

つまり残り少ない高額所得者に高い税率で徴収しても、総額としてはあまり効果がないことは容易に想像できますね~。この日本人の80%ほどが属する部分の所得税を数%上げる方が税収を増やすのに手っ取り早いし、消費を冷え込ませないと思うのですが・・・

 

みなさんはいかがお考えですか?

*1:成長率がマイナスになる、つまりGDPが昨前年より減ること

*2:財政破綻に近い意味