マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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科学者が染まった陰謀論

コンゴで、謎の感染症で子供で死者が相次いでおり、また何か新しい厄介なのが来たかとヒヤッとしましたが、最終的にはマラリアだということがわかりました*1

亡くなった小児は極度の栄養失調が背景にあることもわかりました。

さて、コロナ禍の初期ではマラリア薬が効果があるという研究があり、当時のトランプ大統領も激推ししていましたが、なんとその元となった論文が先日撤回*2されました。詳しく見ていきましょう。

マラリア

まずは例によって、基本事項の復習からしておきましょう。

マラリアは言葉を分解すると、mal(悪い)+aria(空気)で、原因不明だけどとりあえず悪い空気を吸ったら感染したと考えられていました。

実際はマラリア原虫という小さな寄生虫が原因です。

マラリアとは

ハマダラカという蚊の中で増殖したマラリア原虫が、蚊の唾液とともに体内に入ると、肝細胞の中に入り込みます。その後、肝細胞内で増殖すると、肝細胞を破壊して血液中に入るり赤血球にひっつきます。

赤血球内に寄生すると、1週間から4週間の潜伏期を経て高熱・関節痛・頭痛・嘔吐・下痢などの症状を呈します。

重症化すると、脳マラリアになり意識障害などとなり、死に至ることもあります。

日本でも昔はありましたが、環境・生活様式の変化でほぼなくなりましたが、世界的には1年間に2億人以上が感染し、45万人ほどが亡くなります。

日本でのマラリア

死者が多いことから、結核AIDSを合わせて世界三大感染症とされます。

もともとアフリカや東南アジアなど熱帯の地域で主に見られていましたが、地球温暖化により亜熱帯地域が拡大し日本も注意が必要になります。

治療薬として有名なものは抗マラリア薬・クロロキンです。心臓毒性があり、致死量も少ないので、中毒や自殺に使われたりしました。

コロナ禍初期

振り返ると、コロナ禍初期、中国の隠蔽体質で世界中が混乱状態でした。

当ブログでも扱いましたが、香港のウイルス研究者・閻 麗夢(エン・レイム/ Li-Meng Yan)氏の証言です。

閻 麗夢氏の告発内容

彼女は、中国共産党が新型コロナウイルスを作ったと主張し、中国が初期に隠蔽工作をしているときに、2020年4月に家族を中国に残したまま、アメリカに亡命しました。

その後、7月に、FOX NEWSの単独インタビューに応じ、新型コロナウイルスは中国人民解放軍の研究室で作られたものだと証言しました。

当時はワクチンもなく、なんとか既存の薬が使えないかと世界中の医療者・研究者があれこれと奔走していました。

クロロキン

彼女いわく、新型コロナにはマラリア薬のクロロキンが効くので、中国の高官は予防目的で内服していると言いました。

中国はコロナワクチンを全世界に売りつけて儲けたいからクロロキンの効果を隠しているとも証言しています。

当時、トランプ大統領もこのクロロキンを予防目的に内服していると公言しました。

『効かないからやめとけ』

ちなみにトランプ大統領は勧めるも、米食品薬品医薬品局(FDA)は、コロナへの効果は認められておらず、副作用が出やすいので内服しないように声明*3を出していました。

香港のウイルス学者の告発

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クロロキンでコロナ予防?

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フランスの論文

コロナにクロロキンを使うという研究が世界中で行われました。

そんな中でフランスからの研究論文*4が注目されました。

ま、簡単に言うと、コロナ患者にクロロキンアジスロマイシンという抗生剤を使用すると、みんなよくなったぜ~っていう論文です(笑)

常識の話で、ウイルスに抗生剤を使う医者はろくでもねぇです。イベルメクチン(抗生剤)と同じ。

で、当然、世界中から「これちょっとおかしくね?」「再現性ないけど、ほんまか?」と疑義が相次いでおりました。

世界中から疑いの目が・・・

調査がなされていくと、研究内では36人のコロナ患者のうち、20人にクロロキンを用いた治療がされていました。まだ効果もわからないのに薬剤の適応外使用をするのは計画書を作って被検者の同意がないとできません

どうやら、患者への説明や同意がちゃんとされていないことが判明しました。そもそもの科学倫理違反です。

明るみになる不正

しかし、ええ加減だったのは説明・同意だけではありませんでした。

実はクロロキン投与群にはあと6人いたのですが、彼らはまったく改善ないどころか悪化していたのです。しかし、それをカウントすると、クロロキン群のデータが悪くなるので、恣意的に研究からはじかれていた*5のです。詐欺。

悪い結果の患者はこっそり除外

フランス・マルセイユにある感染症病院の当時のトップであったウイルス学者がこのクロロキンの研究の責任者ですが、今はその座からつまみ出されています。当たり前。

彼は、ダーウィンの進化論気候変動なんてものは存在しない!という、いわゆる陰謀論者だということも付け加えておきましょう。

『コロナなんてない!ワクチンは殺人兵器!』・・・(-。-) 乙

そんなこんなで、調査の結果、「クロロキンがコロナに効く」という論文は不正、倫理違反など盛り盛りで信じるに値しないと判断され、先日、論文掲載が”撤回”されました。

仏・薬物治療学会ブチギレ

この件に対して、フランスの薬物治療学会がブチギレております。

「恣意的な操作やバイアスで薬に効果があるように見せかける、明らかな科学的不正行為だ。世界的なスキャンダルだ。」と。

怒るのもごもっとも、この捏造された論文のために、多くの人がクロロキンを求め、ネットで売られ、アメリカでのクロロキンの処方量は例年の80倍*6にもなりました。

もはや”反社会的勢力”です

このせいで、本来の治療で必要な患者に行き届かないという問題*7まで発生しました。

最初にやったように適切な治療なしには亡くなるような感染症です。それを効かないのに、コロナの予防投与目的で多くの人が使ったというのは、大問題です。

科学の政治化

自分の主義主張に合うように、データを捏造したり、操作したというのは科学に対する冒涜です。

残念ながら、日本にも非科学的なことを大きな声で広める医者や科学者がいます。オワってます。まじで。

ま、遅くはなったものの、このウソ論文が撤回されたことはいいことです。

しかしながら、「論文撤回が起こると何が起こるか」について、専門家は懸念を持っています。

陰謀論者による被害妄想

先ほども書いたように、このフランスの研究の筆頭研究者は陰謀論者です。

すると、同じような人たちはその研究結果(捏造やけど)を賞賛し、熱狂的に信じま。そして、論文が撤回となるとどうなるか・・・

陰謀論者は、「この研究は、支配者にとっては都合が悪いから撤回された」と考え(ただの妄想)、さらにそのウソ研究結果を高く評価するのです。

最後に、私たちは大切なことを肝に銘じる必要があります。

科学と陰謀論

科学と陰謀論は順序が逆です。科学はデータからエビデンスを作り答えを導きますが、陰謀論は答えがありきで過程を作ることです。

 

はい、今回の内容は、イベルメクチンの話と全く同じでしたね。

では、また(^^♪

 

イベルメクチンの嘘

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