マルチリンガル医師のよもやま話

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カルシウム不足と大腸癌

近年、世界的に注目されてきている、若年性大腸がんの急増。

当ブログでも過去にいくつか扱ってきました。

誰もが想像する通り、食事が大きな原因だろうと考えられ、その他にも公害や運動不足なども関連がありそうです。

食事では、糖や脂質が多く、食物繊維が極めて少ない食事では腸内細菌叢が乱れ、慢性炎症が起こり、腸内老化→発癌となります。

今回は、また別の物質にも大腸がんとの関連がわかったので紹介します*1

カルシウム

Nature Communications 誌に掲載された研究*2を見てみると、カルシウムの不足と大腸がんの関連について書かれています。

カルシウムは体内でどんな役割をしているのでしょうか?

皆さん御存知の通り、骨や歯を作るのに重要な電解質です。体内のカルシウムの99%がこれに関与しています。

残りの1%は血液中や細胞内にあり、筋肉の収縮血液の凝固などにも関わっています。

カルシウム不足ではイライラしやすいことも、有名ですよね。

また、カルシウムをたくさん含む食品は、牛乳やヨーグルトといった乳製品や、納豆や豆腐といった大豆製品があります。

他にも、ほうれん草や小松菜、ししゃもやちりめんや海藻、貝類にも多く含まれます。

近年は、ヴィーガン活動などで動物性タンパクを避ける人たちもおり、牛乳でなく植物性ミルク(豆乳、アーモンドミルクなど)を使うことがありますが、それらでは牛乳と同じようにたくさんのカルシウムを得ることはできません。

食事と大腸がん

今回の大規模研究では、食事の内容と大腸がんの関連性を調べました。

結果として、毎日のコップ1杯の牛乳やヨーグルトの摂取(Ca 300mg/日)で大腸がんのリスクを17%も減らせるということを示唆しています。

他にも、以前からわかっている通り、過量の飲酒や加工肉の摂取量が多いと、大腸がんのリスクが上がることも、再度確認できました。

ところで、カルシウムが大腸がんリスクを減らすかも、というのは決して新しい話ではありません。何年も前から研究され、指摘されていました。

しかし、今回の研究でさらに情報が積み重なったのだと研究者らは言います。

それでは、今回の研究を少し覗いてみましょう。

超加工食品と大腸癌

www.multilingual-doctor.com

54万人を16年

研究に含められたデータは54万人の女性で、平均16年間のフォローアップを行っています。

97品目の食事・栄養素を対象に、大腸がん発生との関連を調査しています。

そのうち、17の項目が、大腸がん発生と関連が認められました。

例えば、アルコールは大腸がん発生リスクを高め、カルシウム摂取は大腸がん発生リスクを減らすことが示されました。

他にも、朝食のシリアルや果物、全粒穀物、ビタミンCも大腸がんリスクをわずかに下げるようです。

それらの中でも、カルシウムが飛び抜けており、17%のリスクを低下させます。

ただし、カルシウムのサプリも同じように効果があるかは、今回の研究では調べられていません。

カルシウムの摂取推奨量は、アメリカでは1000〜1200mg/日と設定されていますが、日本では600mg〜800mg/日になっています。

なぜ日本の推奨は低いのかは、そもそも日本人のカルシウム摂取が少なすぎるのに、現実と乖離しすぎた数値を目標にするのは・・・ってとこでしょう。

日本は、軟水でCaが少ないのもありますし、火山灰地が多く土壌にCaが多く含まれていないので、そこからできる野菜もCaが少ないのです。

ジャパニーズパラドックス

ところで、ここまで見てくると、日本人は欧米人と比較してCaの摂取量が低く、当然骨も丈夫でないと考えられます。

その通りで、骨密度は日本人は低く、骨粗鬆症の割合も増えます。

ただ!不思議なことに、それに伴う大腿骨の骨折の割合は日本のほうがアメリカよりもうんと低いのです!!!

これがジャパニーズパラドックスです。

もちろん日本人女性の方が、背も低く、体重も大幅に軽いので足の骨にかかる負担が低いことも重要です。

もう一つは女性ホルモンも重要です。

閉経後の女性に骨粗鬆症が一気に増えます、これは女性ホルモンが激減するからです。しかし、日本では大豆を多く摂る習慣があり、イソフラボンにより類・女性ホルモン効果が出て、破骨細胞による骨吸収に緩いブレーキをかけると考えられます。

ま、ちょっと本題から逸れましたが・・・(^o^;)

なぜカルシウムで?

さて、ところで、なぜカルシウムが大腸がんのリスクを低下させるのでしょうか?

1つ考えられるのはカルシウムが胆汁酸遊離脂肪酸と結合して、無害の”せっけん”のようなものを形成し、腸粘膜を傷つけるのを守るということです。

つまり”慢性炎症を防ぐ”ことで大腸がんのリスクを減らしうると言います。

今回の研究の対象は、英国の女性でした。この結果は欧州の白人などには当てはまるかもしれません。

日本人はどうでしょう?

実はアジア人は乳糖不耐症が多く、日本では4人に1人が乳糖不耐症のため、牛乳を飲むとお腹を壊したりします。

また、症状は出ないながらも、乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が低いというのは日本人の8割くらいに及ぶとされます。

つまり、うまくCaが吸収されにくい体質であれば、同じように「1日1杯の牛乳でリスク低減」はまかり通らないだろうと著者は指摘しています。

となると、それ以外の小魚やほうれん草などをしっかり摂るのも重要となってきます。

リスクを減らすには

この研究をまとめて、大腸がんのリスクを減らすには・・・

赤身肉や加工肉の摂取量を減らし、アルコールも減らし、カルシウムをしっかり摂りましょう。

他の研究では、日常的な運動や、食物繊維の摂取でリスクが下がることもわかっています。

できることを積み重ねて、リスクを可及的に減らしましょう。

 

では、また(^o^)ノ