女性のがんで一番多いのは乳がんです。
また、乳がんは他のがんと比べてもかなり若い年齢から罹患率が増えることもわかっており、30代後半から増加します。
ただでさえ、厄介な乳がんをさらに悪化させるものがあります
*1。
今回はそれについて学んでみましょう。

肥満大敵
デンマークの大規模研究(4万2000人以上の乳がん患者を調査)によると、高血圧や高血糖など肥満に伴う諸問題がある女性では乳がんの再発率が70%高まることがわかりました。つまり、そうでない乳癌患者と比べて1.7倍再発しやすいという意味です。
また、乳がん患者では肥満があると、死亡率が最大で80%高まるとも報告しています。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
研究者らの仮説では、いわゆる”メタボリックシンドローム”は、体内で慢性的な炎症を引き起こし、免疫系ががん細胞と真っ向勝負するのを妨げていると。
出ました、慢性炎症。
何度も見てきたように、慢性炎症というのは「悪」です。
炎症が続き、早い周期で細胞が何度も何度も入れ替わるとそのうちに遺伝子のコピーエラーが起こることが、若年性大腸がんなどの原因であることを過去に見てきましたね。
▼慢性炎症と大腸がん▼
エストロゲン
さて、慢性炎症が悪いのはわかりましたが、それだけでこんなにリスクが上がるとは考えられません。
乳がんや子宮体がんのリスク因子に必ず出てくるのは【エストロゲン曝露】です。
女性ホルモンなので、だれもが当たり前に曝露しているのですが、それが多いとリスクが上がることがわかっています。

例えば、生涯子供を産まなかった場合、妊娠・授乳がないので月経がずーっとあります。
つまり、妊娠・授乳の期間がない分、高い女性ホルモンに曝されている期間が長いので、リスクが高まるとされています。
最近の問題としては、環境ホルモンや食事内容、貧困などが原因で女子の初潮が早まっています。
▼初潮が早まっている▼
つまり、エストロゲンに曝され始める年齢が早まっているので、乳がんも若年化してきているのです。
乳がんについては高身長の女性(160cm以上)がリスクが高いこともわかっています。
これも、仮説ではありますが、成長ホルモンが乳がんと関連しているというものや、胎児のときに子宮内で大量のエストロゲンに曝露したため、胎内で大きく成長し(→高身長に)たためであるなどです。
アロマターゼ
肥満とエストロゲンについても確認しておきましょう。
エストロゲン(俗に女性ホルモン)とアンドロゲン(俗に男性ホルモン)は性ホルモンとして知られています。
女性にも少ないながら男性ホルモンがあり、男性にも少ないながら女性ホルモンがあります。
妊娠可能年齢の間、女性では卵巣からエストロゲンが産生されますが、閉経するとそれがなくなります。
これにより、閉経後体毛が増えたりやや男性化してくるわけですね。
ところで、卵巣のない男性にもエストロゲンがあると言いましたが、どこで作っているのでしょうか?

実は、アンドロゲンの主要メンバーのテストステロンという男性ホルモンから、アロマターゼという酵素の力を借りてエストロゲンを作っています。
で、閉経後の女性も同じ仕組みで、アロマターゼを使って男性ホルモンをエストロゲンに変換しているのです。
このアロマターゼという酵素は脂肪組織にありまして、肥満女性は脂肪が多いのでアロマターゼも多く、閉経後もエストロゲンは少し多くなるというわけです。
だから、エストロゲン依存の乳がん的には肥満はよろしくないというわけです。
乳がん死亡率を減らせ
さて、もとの話に戻って・・・
デンマークの研究者らの論文の趣旨は、肥満が乳がんの再発リスクを高め、さらには乳がん死亡リスクも大幅に高めているので、痩せましょう!ということです。
これは我々医師側も、患者さんに乳がんの治療だけを施すのでなく、肥満によるこのようなリスクを説明し、ダイエットも同時に促すことが求められるということです。
▼太ったのはあなたのせいではない▼
生活習慣を改め、肥満を解消することとアルコール消費を減らすことで、英国では20〜30%の乳がん死亡を減らすことができると予測されています。
ちなみに、病気に関しては人種差についても必ず意見が出ますが、ヨーロッパ、北アメリカ、アジアの大規模研究すべてで肥満は乳がん患者の予後をかなり悪くすることが一致しています。
また乳がんの診断時にメタボがある人も予後が悪い事もわかっています。
乳がんは非常に多いがんです。
すべての女性はメタボにならないようにしなければいけません。
(もちろん男もな!)
では、また(^o^)ノ