マルチリンガル医師のよもやま話

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人工地震のおはなし

2月13日 夜11時過ぎに福島県沖で発生した地震は2011年の東日本大震災の余震であると発表されました。コレについては、「さすがにもう別物じゃないかな?」との見解も多く、たまたま近い場所で起こった別物であると考え、気象庁は今後「余震」という表現を辞める検討に入っています。

さて、大きい地震があるといつも出てくるデマ。近年はSNSの普及で拡散速度が格段早くなっています。中にはタチの悪い人種差別を含むデマも広がります。

今回は、毎度地震の度に出てくる”人工地震”の都市伝説を見ていきましょう。

東日本大震災

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放射能問題をわかりやすく

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人工地震説

2011年の東日本大震災のときも広がった人工地震説。「アメリカが起こした人工地震だ」とかそういったものです。大地震があるといつも出てくるものです。(笑)

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SNSで拡散された情報 <例>

中には、安倍前総理の陰謀で起こされた人工地震だというのもありました(笑)

入院中にこういう発言を真顔でしていると精神科に診察依頼を出される恐れがあるので注意してくださいね( *´艸`)笑

冗談はさておき、人工地震は実際に日本で行われていたのはご存じでしょうか?1995年に阪神大震災が起こり、日本中で大地震への関心が高まりました。

阪神大震災▼ 

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地震調査研究推進本部というものが設置されて、地殻調査などを行っています。その一環で、過去には火薬などを使って人工地震を起こして調査をしていたそうです。これは東日本大震災 (2011) より以前の話です。今はこのような調査はしていません。

他にも核実験などで地震が起こることがありますが、これも人工地震の1種です。

いずれにしても人工地震で起こせる地震は揺れも小さく、震度6やら7やらを起こすようなことはないです。

核実験の監視

実は自然地震と人工地震は容易に判別が可能なのです。地震計で見られる波が違うからです。当然、自然地震は地殻変動なので地球の深いところから起こるものです。一方、人工地震は人間が掘れる深さなので浅い所で起こります。

これらの違いは当然地震計の波形に差が出てきます。P波とS波って習いましたよね?それの話です。(専門ではないので割愛しますが・・)

実は地震計の存在は、自然地震のためでもあるのですが、他国の核実験の監視という意味合いもあるのです。さっき述べたような波形の違いから隣国で核実験があったなどということを知ることもできます。

過去に、冷戦時代のアメリカ、ソ連で行われた核実験でM7.0程度の人工地震が起きました。北朝鮮でも2017年に核実験が原因の人工地震が複数回ありました。これは北朝鮮からの発表ではなく、日本やアメリカが地震から”核実験”を断定したのです。

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気象兵器

人工災害としてもう一つ知っておかなければいけないのは気象兵器の存在です。

EMT(環境改変技術)と呼ばれることもあるのですが、要は気象・環境を意図的に操作し、人為的に災害を起こす技術のことです。

1977年に気象兵器を禁止する条約ができており、アメリカは1978年、日本も1982年に批准しました。つまるところ、気象を操作することを軍事利用はしてはいけないというものです。

45年も前にこんな条約があるということは・・・

はい、そうです。実際に使われた過去があったということです。

ポパイ作戦

先ほどの条約の年代から予想がついた方もいるかと思いますが、ベトナム戦争(1967-1972)です。アメリカが現地での戦いを有利に進めるために気象操作を行いました。

ヨウ化銀とヨウ化鉛から人工雲を作って雨を降らすという技術を用いて、なんとベトナム、タイ、ラオスなどの雨季を1~1.5か月延長させたのです!!

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ポパイ作戦の主な目的

このポパイ作戦は、雨季を長期化させ、土壌をぬかるませたり、川を増水させることでベトナム軍の移動を難しくさせようという目論見でした。

この作戦は成功したのですが、思わぬ副作用があったのです。

ポパイ作戦の間にベトナム軍に捕まった米軍捕虜を救出する奇襲作戦を行ったのですが、この大雨が原因で米運捕虜は移動させられていたのです。つまり、救出作戦に行ったらそこには捕虜はおらず空振りに終わりました。

1971年になってこのポパイ作戦が明るみに出て、アメリカ国内でも気象兵器の使用禁止の話になったのです。

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HARRP(ハープ)

これは都市伝説としては有名な話ですね。笑

HARRPというのは高周波活性オーロラ調査プログラムのことです。オーロラの調査ってなんか素敵な響きですね~

このプラグラムには米空軍、米海軍、アラスカ大学、UCLA、スタンフォード大学などもかかわっておりますが、なんと日本の東京大学も協力をしています。

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オーロラの基礎

すみませんが、物理はあまり得意でないので、ものすごいザックリです。

オーロラは太陽から入ってきた太陽風が大気中の酸素や窒素と衝突して発光しできます。日本でも北海道ではごくごくまれに赤いオーロラが見れます。

HARRPはアラスカにあるのですが、アラスカは北緯60~70度にあるからですね。

さて、このHARRP、高周波活性オーロラ調査プログラムはその名の通り高周波を用います。それゆえ色々な陰謀論が出来上がりました。

HARRPにまつわる陰謀論

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HARRPにまつわる陰謀論

『高周波ゆえに地殻変動』とか、ありえそうな話から、人工地震をあたかも真実かのように語るこの手のものは恐ろしいですね~。知らない人は信じちゃいそうな。笑

科学としてわかっていることは、前後関係が逆なんです。つまり大地震の数日前に上空の電離層が乱れるということです。これは地震が起こった後に振り返って調べてみるとわかることです。

地震の前兆として起こった”電離層の乱れ”がHARRPによるものという証明にはまったくもってなりません。

さらに、スノーデン氏がHARRPについて暴露したというガセネタが広まっており、それも相まってこの陰謀論は有名になりました。ちなみにスノーデン氏自身がそのような発言した記録はありません。

2014年で米空軍はHARRP研究施設を閉鎖しました。その後はアラスカ大学が引き継いで民間の研究機関として存在しています。

 

まとめ

人工地震は波形から判別が可能です。しかもあり得る人工地震は核実験などのものであり、大規模な人工地震を起こすのは不可能です。

できるなら、アメリカは既に中国にやってるでしょう(笑)

しかし、都市伝説や陰謀論は聞く分には面白いものであるのもまた事実ですね。

 

ではまた(^^♪