マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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コロナを強制終了した英国の現在

今年の2月、世界に先駆けてコロナ禍を強制終了したイギリス。

あれから早くも8か月となります。日本も遅ればせながら徐々に緩和していってます。

さて、積極的なカウントをやめ、規制をなくし、コロナを見えなくしたイギリスの現状について学びましょう。

ラクダの背中のワラ

さて、わざわざこの内容を取り上げるということは、ご察しの通り、どうやらイギリスでは現在あまり調子よくいってなさそうです。

ガーディアン紙の記事*1を見ながら状況を学びます。

記事のタイトル

この記事のタイトルですが、"heavy straw on camel's back" というのがあります。一応、イメージ写真を付けましたが、これは元々英語のことわざをモジったものです。

これでもかってくらいの量のワラをラクダの背中に積んでいる状況で、最後の一本を乗せるとラクダの背骨が折れちゃったっていう話が元です。

つまり、もうすでにイギリスの各病院はギリギリの状態という意味になります。

現在の感染状況を見てみましょう。

めちゃくちゃ落ち着いてるやん

イギリス政府の公式データ*2を見ると、全然落ち着いてるやーん!!となりますね(笑)

ほな、本題に入っていきましょう。

病院が逼迫

新型コロナ新規陽性者数のグラフを見るとどうってことありませんが、実情は全く違うようです。

すでに病院が逼迫している

イギリスの少なくとも8つの大病院が『医療危機宣言』を発出しており、予定手術の延期・中止や重症以外は救急受診を控えるように声明を出しています。

なかなかな状況ですね。

コロナ入院患者が急増

コロナ患者の入院が1週間で37%も急増しております。というか、これがあるからこそ大病院が予定手術の中止に踏み出しているわけですね。

公式データでも入院患者増加

たしかに、英国の公式データでも入院患者数は急な角度で増え始めてますね。さっきの、陽性者数のグラフとはまったく違う印象です。

コロナ禍は終わっていない

もうお気づきの通り、現在出ている『感染者数』というのは全く感染状況を反映していません

その感染者数だけを見れば、「コロナは終わった」となりますが、実際はそうではありません。

治療が必要なコロナ患者でベッドが埋まる

軽症コロナは自宅療養です。つまり、対応が必要な、日本でいえば中等症とか重症の患者が病床を埋めていっているのです。

重症コロナ患者が増えると、ICUを埋めていくので、術後の患者などがICUに入れません。結局、癌患者の手術も後回しになっていきます。

予定とは違う現実

見える『感染者数』を少なくし、規制もしないことで、コロナにより社会生活に影響が出なくなるようにコロナ禍を終わらせに行きましたが、実際は、コロナの広がりの程度がつかめず、急に入院患者が増えて医療現場に影響を与えているというのが実情です。

看護師が退職

病院では、コロナ患者の処置などでは当然しっかりと防具を着て感染対策をします。

当たり前ですが、医療従事者は自分の身を守る必要があるし、他の患者に移さないためです。この手間とストレスは測りしれません。

看護師の辞職が多い

また、重症患者には人手がかかります。こういった重労働、そして自らの感染リスクなどから、看護師の辞職が増えているようです。

こうして人手不足もまた病院が厳しい状況に追いやられている原因の1つです。

ツインデミック

コロナ規制を撤廃したことで、インフルエンザが復活しています。今年、オーストラリアではインフルエンザが流行*3しました。

恐れられているのは、冬場にコロナとインフルエンザの同時流行、いわゆるツインデミックです。

ツインデミックの恐怖

ツインデミックにより、入院が必要となる人たちが急増することが想定されるだけでなく、医療従事者も感染により病欠が一定数見込まれます。これにより、病院の需要と供給のバランスが崩れ、かなり厳しい状況になるだろうと考えられています。

これは当然、死者の増加という結果につながります。

ワクチン接種とマスク着用

こうした危機的状況を和らげるために、専門家は高齢者などの重症化リスクのある人は冬になる前にコロナワクチン追加接種をし、公共交通機関や人ごみではマスクの着用を推奨しています。

経済回復せず

社会生活がコロナより影響を受けない為にコロナを終わらせに行った英国でしたが、経済はどうなったのでしょうか。

経済回復せず

これもガーディアン紙の記事*4です。

コロナを見えなくし、規制もなくし経済をまわしたはずが、コロナ禍初期よりも経済状況は悪いのです。そして、それはG7で唯一イギリスだけと。

もちろん、イギリスの経済の問題はコロナだけではないにせよ、予想外の結果でした。

さいごに

いかがでしたか?

先陣を切って、コロナ規制を撤廃し、with コロナに進んだイギリスですが、どうやら予定通りに入っていません。

やはり、コロナによる入院患者が増えることで病院がかなり厳しい状況になっており、他の疾患の患者にも影響を及ぼしています。さらには、それにより、看護師の辞職が増えており、提供を維持することも困難な状況でした。

また、コロナを見えなくして経済を回すはずでしたが、経済は思ったように回復していないというのがイギリスの現状でした。

 

では、また(^^♪

 

アメリカのwith コロナ

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