アメリカのナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問のニュースが大きく報道されています。今回はこのペロシ議長の訪台について少し背景を学び、さらに安倍元首相との不思議な関係についても学んでみましょう。
ペロシ議長
まずは、基本情報から。
ペロシ下院議長は御年82歳で、”後期高齢者”です。バイデン大統領は11月で80歳です。アメリカも高齢な議員が多いですね。
ところで、下院議長って何やねん?と思われるかもしれません。
日本でいえば、衆議院議長みたいなもんです。衆議院議長は、内閣総理大臣、最高裁判所長官と並んで、日本の政治のTOP3に入るわけです。
アメリカの下院議長は、①大統領 ②副大統領 ③下院議長の順で、3番目の地位の人ということになります。映画であるような、大統領にもしものことがあって、さらに副大統領にもしものことがあれば、権限は下院議長に移ります。
ペロシ議長は基本的にリベラル派の民主党員で、共産主義や独裁政権に批判的な立場を取っています。特に、彼女の経歴の中で重要なのは『中国敵視』『台湾支持』です。
天安門事件では中国に乗り込んで政権批判のデモを行ったり、中国の人権問題に対して高い関心を持ってきました。
2008年にはブッシュ大統領に、2022年はバイデン大統領にそれぞれ北京五輪ボイコットを提案*1しました。
なぜ今?なぜ台湾に?
なぜ、今回ペロシ議長は台湾に行ったのでしょうか?
実は、今回の訪問は、アメリカ議会が夏休み中で、インド太平洋地域の安全保障や相互協力の話し合いのために、議員団を引き連れてアジア訪問をすることが元々の行程でした。
このアジア訪問は4月の予定でしたが、ペロシ議長が新型コロナに感染し、延期*2となっていたのです。
ところでこのアジア訪問で、『台湾』については最初は言及されていませんでした。
ペロシさんの政治スタンスは『反独裁』『中国嫌い』『台湾支持』でしたね。
元々予定していなかったのに、急に台湾に行くのは何か理由があるはずです。
実は、この訪台は自身の政治キャリアに最後の華を持たせるための”卒業旅行”ではないか?との指摘*3があります。
82歳と高齢で、現在の民主党の迷走から、11月の中間選挙で、共和党が勝つだろうと言われています。となると、そろそろ”引退”ということになります。
中国ブチギレ
中国が、かねがね明言しているのが『一个中国(ひとつの中国)』です。
つまり、台湾は国ではなく、中国の一部であるということです。ここだけは決して譲らないというのがこの一个中国です。
つまり、一国の高官が中国政府を通り越して台湾へ政治的訪問をするということは、中国に喧嘩を売ったということになります。実際に、中国は反発し、大規模軍事演習を行い、台湾に圧力を掛けています。
しかし、こうなることは容易に予想できました。なので、25年間アメリカはそのようなことをしていませんでした。
米国の下院議長が台湾を訪問することが中国を刺激しどれだけ危険なことか、台湾内でも批判が多かったようです。一度は、台湾民進党政府はペロシ議長の招待を撤回しましたが、ペロシ議長は、自らの『有終の美』のために訪台を貫いたと台湾の新聞*4は伝えています。
中国を選んだアメリカ
ところで、現在、台湾を『国』として扱っているのは13国だけです。その他の国は、台湾ではなく中国と国交を結んでいます。なぜでしょうか。
その理由は、アメリカが中国と国交を結んだからです。多くの国はアメリカに従いました。
当時は東西冷戦中で、朝鮮戦争⇒ベトナム戦争という代理戦争がありました。
ベトナム戦争が長期化し、アメリカ世論も冷めてきており、ニクソン大統領は戦争を終わらせたかったのです。それには中国の協力が必要でした。
また、発展途上国で莫大な人口を抱える中国は今後の巨大なマーケットとなりうるので、台湾よりも中国と近づくメリットを取ったのです。
中国としても、ソ連に対する不信感があったので、利害一致したということでした。
安倍元首相と台湾
今回のアジアツアーで日本を訪れたペロシ議長は、次のような投稿をしました。
そう、安倍さんも同じく『親台湾』ですね。例えば、当初ワクチン調達に苦しんでいた台湾から直接相談を受けた安倍さんの尽力あって、日本からの提供ができました。
▼安倍元首相と台湾▼
安倍さんが亡くなったあと、台湾では多くの人が悲しみました。
実は、安倍元首相も台湾に行く予定だった*5のです。しかも、ちょうど今頃。
元首相とはいえ、安倍さんはかなり影響力のある政治家で、その人が台湾の元総統の命日に合わせて訪問することは中国を相当怒らせたことでしょう。
安倍首相の一件
今回のペロシ下院議長の訪台の前に中国は報復をほのめかして*6いました。
これを見ると、安倍さんの訪台に対しても相当怒っているだろうとは想像がつきます。
そんな中、かなり保守的で、嫌中国・嫌韓国の論調でおなじみの夕刊フジでは、このような記事*7がありました。
夕刊フジはタブロイドなので、『盛ってる』ということはお忘れなく。
また文面にある、この『情報機関』からの情報については、ソースはないのでどのレベルの人たちの情報か、またその信憑性も不明です。
僕も色々調べましたが、そのような情報はほかに見当たりません。陰謀論に近いと考えています。信じるか信じないかは・・・
さいごに
いかがでしたか?
ロシアのウクライナ侵攻の後、中国が台湾に侵攻するのでは?という懸念があります。
資本主義を共有する西側国や日本は中国よりも台湾寄りの姿勢を見せています。
そんな中、長く中国の人権問題などに強い批判をしてきたペロシ議長が台湾を訪問しました。高齢であり、政局を見ると、引退も近く、最後の政治的功績が目的なのかもしれません。
しかし、『ひとつの中国』という絶対ラインを超えてしまうと中国の逆鱗に触れてしまいます。実際、中国はかなり反発しています。
安倍さんの訪台前の事件についても、中国が絡んでいるかも?という記事もありますが、根拠は少し薄弱です。
では、また(^^♪
*1:https://www.reuters.com/lifestyle/sports/pelosi-says-us-should-diplomatically-boycott-2022-olympics-china-2021-05-18/
*2:https://edition.cnn.com/2022/04/08/asia/nancy-pelosi-covid-19-taiwan-us-asia-intl-hnk/index.html
*3:https://www.bbc.com/news/world-us-canada-55518870
*4:https://www.chinatimes.com/newspapers/20220802000337-260119?ctrack=pc_main_headl_p04&chdtv
*5:https://news.yahoo.co.jp/articles/ab3bbcedf8ca658c3816da8c3f327b778f650b11
*6:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM012PP0R00C22A8000000/
*7:https://www.zakzak.co.jp/article/20220802-5KWKSYSHGFNAZKSUADUFN56KMM/?outputType=amp