さて、これから暖かくなってくると花粉と共に取りざたされるPM2.5。これどういう意味かご存じですか?
先日、韓国の知人から「日本はPM10の値は報道されないのか」と聞かれました。不覚にもPM10の存在を知りませんでした。
今回はPM2.5 とPM 10についてご説明いたしましょう。
粒子状物質(PM)
まずは言葉の意味から知る必要があります。
PM = Particulate Matter (粒子状物質)のことです。粒子径が10μm以下のものをPM10, 粒子径が 2.5μm以下のものを PM 2.5 と呼びます。
ですので、以下の図を見てもらえばわかりやすいですが、PM10の中にPM2.5は含まれることになりますね。
ところでこれらの小さな物質の内容はどんなものなのでしょうか?
実はこれらの中に黄砂や粉塵や花粉などの様々な液体・個体が含まれています。自然からできるものもあれば工場の煙や自動車のタイヤのカスなど人為的なものまで幅広く存在しています。
さて、なぜ問題になっているかと言うと、これらの微小粒子状物質にさらされることで死亡率が高くなるからです。
PM10とPM2.5
先ほども述べましたがPM10とPM2.5はそれぞれ粒子の大きさで決まっています。PM2.5の方がさらに微粒子と言うことです。
大きさのイメージですが、スギ花粉がおよそ30μm程度ですからそのさらに1/10くらいの小ささですね~
PM2.5はむちゃくちゃ軽いので風に乗るとはるか遠くまで広がりやすい特徴があります。また、細かい分だけ吸い込まれると肺の奥の奥の狭いところまで入り込みます。ですので、PM2.5の方が健康面でも影響が大きいということになります。
先ほども述べましたが、大きさの定義から花粉や黄砂などもPM2.5に含まれます。
ならばPM2.5だけを測ればいいじゃん?
なのですが、PM10を測るのとさらにさらに小さいPM2.5を測るのは難しさが段違いです。日本では今PM2.5をメインに公表していますが、世界中ではPM10までしか測れない国や地域もあります。ですので、世界的な基準のためにはPM10で基準値も出す必要があるわけですね。
要は日本は経済発展の時に環境問題に苦しんだのでその分、早期にPM2.5の測定が普及したという話を聞いたことがあります。
健康面への影響
吸い込まれた微細粒子は肺の奥深くまで入ります。ほとんどは呼吸や咳などをしているうちに吐き出されますが、一部が肺の奥に沈着してしまうのです。特にCOPD(肺気腫など)と言って長期の喫煙によって肺がスカスカになってしまい、うまく息を吐きだせない病気を持っている人はさらに沈着しやすいと言われています。
肺の奥に沈着するとそこでアレルギー反応が起こり、喘息症状が現れたりします。他にも不整脈を起こしやすくなるとする報告もあります。こういった症状は、もともと呼吸器系や循環器系に病気を持っている人で起こりやすいことがわかっています。
発癌性については、今の段階では「あるかもしれない」のレベルです。というのも、この微細粒子の詳細がわかり始めてからまだまだそんなに月日がたっていないため証明できないからです。20-30年以上経ってみて初めて影響がわかるのです。
しかし死亡率が上がることは認められています。アメリカがん学会(ACS)の研究などからPM2.5の濃度が高ければ肺癌などで死亡する確率が上がることがわかっています。
予防は基本的に手洗い・マスク・ひどいときは自宅待機です。
日中韓での微細粒子
欧米では1990年代にPM2.5についての基準地などが決められましたが、日本はなぜか出遅れました。2009年になって初めて「1日平均値 35μg/m3 以下」と示し、その基準をるときは注意報を発令することになりました。
中国では90年代からPM10の濃度が基準を逸脱していました。しかし、あまり騒がれることもなくいましたが、2011年に中国のアメリカ大使館が中国でのPM2.5濃度を独自に測定しtwitterで公開したのです。その値が中国政府の発表と大きくかけ離れていることから一気に注目を浴びるようになりました。
中国でのPM10やPM2.5の濃度上昇は石炭燃焼や自動車の排気ガスであるとされます。特に2013年の大気汚染は「史上最悪レベル」と言われ、これが多くの日本人が関心を持った最初の出来事だったと記憶しています。
韓国のPM2.5問題は日本でもニュースになっているのでご存じでしょう。ちなみに韓国ではPM2.5は一般には【ミセモンジ 미세먼지(微細粉塵)】と呼ばれています。このミセモンジ(PM2.5)はひどいときに日本の濃度の2倍以上にもなるそうです。この原因については「中国の隣国だから」説と「いやいや実は韓国自体で発生」説とで完全に二分されています。
一応、韓国の環境科学院の分析では大部分は国外からきているとしていますが、中国から猛反発をされました。
中国「お前らのディーゼル車と火力発電が悪いんだよ」
そして、韓国政府はPM2.5中国由来説を否定しました。(国民は信じていませんが・・・)
N95マスク
さて、新型コロナウイルス肺炎で少し話題になったN95マスクをご存知でしょうか。これは私たち医療者は結核患者さんなどと接するときに使用します。N95マスクは0.3μmの粒子を95%以上カットできる(=通過させない)ことが「95」という数字の意味です。そう、つまりPM2.5(2.5μm以下)もほとんど吸いません。結核菌もたしか2μmくらいの長さだったと思います。欠点は普通のサージカルマスクと比べ値段が圧倒的に高いことと、着けてみればわかりますがめちゃくちゃ息がしにくいです。
▼新型コロナウイルス肺炎についてはコチラ▼
まとめ
PM2.5というのは粒子径が2.5μm以下のスーパー小さい粒子のこと。
世界ではPM10という評価基準も存在している。
自然発生したものと人為的に発生したものが含まれている。
これらのスーパー小さい粒子は肺の奥深くに入り込み悪影響を与える。
PM2.5の濃度が上がると死亡率が上がることがわかっている。
これからは天気予報の時にPM2.5の値も確認してみよう~