マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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なぜ日本の対応は遅いのか ~他国でのコロナの対応を見てみよう~

緊急事態宣言が出て1週間。都道府県知事からの休業要請も始まりました。

人の接触は減ってきていますが、この効果が実際に数字として出てくるのは10日くらい後です。今は辛抱して待ちましょう。ONE TEAM!!

さて、よくメディアとかでも日本政府の対応が遅すぎる!とかいう批判をよく見かけます。他にも「なぜ韓国が検査をこんなにできてるのに日本は...」などもしょっちゅう見ます。(笑)

この辺も少し見ていきましょう。

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アメリカでの状況

ニューヨークでの惨状はニュースでもさんざん見たことでしょう。以前の記事でアメリカ国内でも東海岸のニューヨークと西海岸のサンフランシスコで感染の広がりが全然違うことをご紹介しました。↓↓↓

www.multilingual-doctor.com

ニューヨークは”車社会”アメリカの中でも珍しく地下鉄が発達しており市民の通勤の足になっています。また、貧富の差が激しいニューヨークは人口密度も圧倒的に高く「3密」の宝庫なわけです。

さらに肥満は今回のCOVID-19の重症化するリスクであることもわかっています。所得が低い人に肥満が多いという傾向もあります。

低所得者の方が多く炭水化物を取るからだそうです。

低炭水化物ダイエットについてはコチラ

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また、アメリカでは黒人は、白人よりも低所得であることが多く、日本のような国民皆保険でもなく普段から十分な医療を受けれていないことが予想されます。

アメリカでは黒人の割合は15%ですが、感染者の43%が黒人です。

headlines.yahoo.co.jp

さて、アメリカは「日本の検査数を絞っている、日本のデータは信用ならねぇ」という立場をとっていましたが、実は最近アメリカも医療崩壊を避けるために軽症者への検査をやめ自宅待機としています。それにより在宅死が増えていることも問題となっています。

 

アメリカでのニュース

さて、アメリカでの最近のニュースと言えば、ワクチンでしょうか。

世界中のみんなが待ちに待っているコロナウイルスのワクチンは実用化に向けて3月からModerna社が既に人での臨床研究を始めています。順調にいけば秋ごろには完成しまずは医療関係者に使われる予定としています。

techcrunch.com

ワクチンに関してはイギリスのオックスフォード研究所も「早くて9月にワクチン完成か」ということがBBCで報道されていました。

感染爆発の速度を落として、医療崩壊を回避して最後はワクチンで「集団免疫」と「重症化回避」というのが今のところの happy endingでしょうか。

 

あとは軍医学研究所(NCMI)からのリークで、実は昨年の11月の時点でアメリカ政府も【謎の肺炎】が中国で流行しているという報告を受けていたというものです。

abcnews.go.com

まぁ、ウイルス側の変異の状況などから、以前から「中国で11月頃から流行っていたのだろう」と推測がされていたので驚きませんが。

もしこれが事実で、このときにアメリカ政府が他国にも情報共有し警戒していたらこれほどのパンデミックは避けれたのかもしれません。

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ニュージーランドは「排除」

ラグビー世界最強のオールブラックスを擁するニュージーランドを「かなりうまくやった」と英米のメディアが賞賛しています。

ニュージーランドは感染者1350人ほど、死者5人だからです。ニュージーランドは2月3日の時点で中国からの飛行機を入港禁止とし、要するにコロナを「排除」していたからうまくいったという内容です。

「なるほどすごいなー」

しかし、このブログの読者の皆さんはココでは終わらないはずです!

はい、ニュージーランドの人口は500万人です。日本の1/25なわけです。人口が圧倒的に多い国の方が死者が多いのは当然でしょう。

こういったときは人口100万人あたりで見てみるといいのです・・・

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米ジョンズ・ホプキンス大学より

はい、一番右端の数字を見ると人口100万人あたりの死亡者数が出ています。日本はまだ死亡者は増えそうですが、少なくともニュージーランドと同等レベルなわけです。日本は叩かれるが一方・・・ 

はい、データは見せ方次第で大きく意味が変わるわけです。

GDPと一人当たりGDPはコチラ

www.multilingual-doctor.com

 

韓国式は日本ではできない?

はい、よくお昼のワイドショーで言われてました。「なんで韓国はこんなにPCR検査できるの日本はやらないの?一体政府は何考えてんだよー」。誰とは言わないが感情的な司会者が・・(笑)

前も言いましたが、まず韓国はMERS(2015年)でかなり痛い目に遭いました。そのときに検査体制をしっかり整えたことで今回の初期対応が早かったわけですね。

SARSとMERSについてはコチラ

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あと、よく勘違いされいてるのは「韓国では希望すれば全員検査してもらえるのに」というもの。日本のワイドショーがずっと言っていますが、これはです。韓国も対象を絞って選別診断所などで検査を行っています。じゃなきゃ、全人口が検査してますよね?5000万件。笑 実際検査数は全人口の1 / 100です。

韓国で検査数が圧倒的に多いのは大邱(テグ)での集団感染のせいです。7000人ほどの感染者が見つかりました。

よく「ドライブスルー式」が取り上げられますが、実際韓国の検査数があんなに多くできたのは別の理由があります。軍人です。日本ではマネできません

 

韓国の'軍人'が家庭訪問検査

よく考えると感染者が病院に来て検査をすると来る道中に人に感染させるリスクがあります。しかし家庭訪問ならばそのリスクはありません。

ただ、問題は検査する人の数ですね。そんなにたくさんの家庭訪問に医療者が行くのは現実不可能です。そこで「兵役」代わりの「公衆保険医」です。韓国ドラマで見たことがある人もいるかもしれません。田舎の医師。

医師が入隊代わりに田舎で3年医師をするこの保険医が国の命令で動員されたわけです。当然「兵役」なので命令ができます。彼らの活躍があったのです。

これについてはものすごくわかりやすい記事がありました。↓↓

headlines.yahoo.co.jp

 

住民登録番号

日本でもマイナンバーと言うものがありますが、韓国ではご存知の通り、まだ北朝鮮とは休戦中なわけです。当然スパイも韓国にいるだろうと。

そのスパイを見つけ出しやすくするために全国民に住民登録番号というものがあります。これのすごいのは日本のマイナンバーと違って、銀行口座、スマホ、納税などあらゆるものと紐づけされています。

つまり、いつどこで誰が何を買っただの誰と会っていただのすぐにわかるわけです。それを利用して「感染者」が今どこにいるのかと言うのを教えてくれるアプリができたわけです。これを利用して感染者との接触を避けるという動きがありました。

日本でも今、それに近いものを導入するか検討していますが、日本ではプライバシーの問題が大きな障壁となります。

 

番外編

いまだに近隣に感染者0の国があります。北朝鮮です。世界の多くの国はこれについては信じていませんが・・・↓↓(参考までに)

news.yahoo.co.jp

中国の死者数にも疑問が持たれています。アメリカ政府は中国のデータは「」だと公式に発表しました。また、発表された死者数(3500人弱)と同期間での携帯の解約者数2100万回線)があまりにかけ離れているので疑惑が出ています。

 

日本では政治が遅い理由

これは理由は簡単です。「自由すぎる」からです。

発言も自由、どっかの国みたいにSNSに国の悪口を書いても削除されません。監視もされません(たぶん)。

今回の緊急事態宣言も海外のロックダウンのような「強制力」は持つことができず、「要請」までしか今の憲法ではできません。軍がないので戒厳令もありません。そういう国なんです。

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この上の図がすべてを物語ってますね。(笑)

もちろんいろんな意見を話し合うのが重要ですが、その副作用でどうしてもスピードは落ちます。

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助成金のやり取りもこうでしたね。公金を使うのに不適切として「ホステスなどは対象外」とするとすぐに野党は「職業差別だ」と反発しました。

しかし、もし最初から「夜の職業」も含めて減給となったすべての方を対象にすると言っていたら(上図の後半)どうなっていたでしょうかね。

税金の使い道としていかがなものか」とか「バラマキ政治だ!」とかなっていたかもしれません。

 

はい、今回はいくつかの国でのコロナウイルスの戦いを少し見ながら、日本の対応が後手後手に回ってしまう理由についても考察してみました。

みなさんのご意見もお待ちしております。