コロナ前の話ですが、上海行きの飛行機に乗った時、機内のモニターでは気功の映像が流れてくると、中国人の搭乗客らの一部はそれに合わせて手を伸ばしたり、深呼吸などをしているのを見ました。
気功は中国の文化に根付いているんだなぁ～と感じた一幕でした。
さて、その気功と言えば、法輪功っていうのをご存じでしょうか？聞いたことはある人が多いかもしれません。今回はそれを学びましょう。
法輪功
サンフランシスコに行ったときに、黄色い旗を持ったアジア系の人たちのデモを見かけました。アメリカ人はファールンゴンと呼んでいて何だろうっと思っていました。
後でわかりましたが、それは法輪功のことでした。
法輪功を作ったのは李 洪志という男です。仏教と気功を学び、儒教も混ぜ、独自の物へと発展させ法輪功を作り上げました。
法輪功の普及活動は1992年から本格化され、比較的新しいものです。政治不関与というのを明示しており、もちろん国に目を付けられないためでしょう。
法輪功は当時の中国の”気功ブーム”と相まって爆発的に人気を博し、学習者が爆増しました。
90年代後半には学習者は7000万人を超えていたとも言われています。日本の人口の半分以上w
これだけの一大勢力は中国共産党にとっては、脅威であり厄介な存在となったのです。
中国政府による弾圧
中国政府は、法輪功に国の支配下に入るように命じましたが、これを拒否しました。
かくして政府は法輪功への取り締まり強化を決めました。
共産党員の間でも法輪功に傾倒する者が多数いたことで、1999年 江沢民総書記は法輪功を中国共産党に対する最大の脅威とし、消滅させるように委員会『610オフィス』を設立しました*1。
1999年7月、中国各地で法輪功学習者が逮捕されます。香港の新聞では5万人近くが拘束されたとしています*2。
そして中国共産党内でも、中国共産党は無神論であり、法輪功に傾倒してはいけないと指示が出ました。
また、610オフィスの活動内容は公開されていませんが、米国連邦議会下部組織の報告書*3などによると、法輪功学習者への超法規的な判決、強制的な再教育、拷問、殺害にかかわっているとしています。
プロパガンダ
法輪功を撲滅すると決めた中国政府は、国営の中国中央電視台で数か月にわたり夕方のニュースで連日法輪功批判を行いました。
法輪功は反科学で社会の安定を脅かす邪悪な存在として報じられました。
日本にある中国大使館の公式HPでも『中国のオウム真理教』であると紹介しています。
しかし、プロパガンダ作戦はなかなか効果が見えないため、中国の最高裁は『邪教』『カルト』だという司法解釈を発表*4しました。
そして、転機となったのは2001年でした。
天安門で突然5人が焼身自殺を図り、2人が死亡しました。
中国政府はこの事件を利用し、法輪功信者が政府に対しての抗議活動として焼身自殺を試みたと説明し、法輪功は危険な宗教であるというアピールを強めました。
すると、この事件以降、中国の民意も大きく傾き、「法輪功やべぇ」となりました。
それに伴い、中国政府も法輪功学習者への弾圧を強めることとなりました。
▼オウム真理教はなぜ？▼
再教育
邪教・法輪功学習者は強制収容所や再教育センターで、再教育されます。
法輪功を学んだ自分が間違えていた、「法輪功はクソだ」と言う・・・こうしたことができるようになるまで徹底的な”再教育”が行われます*5。
再教育を拒否すると、拷問や性的虐待に遭ったようです。拷問による死者が出ているのも報じられています*6。
そして何より恐ろしい『臓器狩り』です。
ご存じの通り、日本での臓器移植は、献体がなかなか見つからないので長期間待たされます。しかし、中国では次々と献体が出てきて臓器移植が早くできます。
死刑執行数世界一の中国では、死刑囚の臓器提供もしていましたが、2015年に停止しています。
中国で臓器移植が増えたのは1999年、そう、法輪功の迫害が始まった年からです。
あるジャーナリストが行った調査*7によると、2000年～2008年の間に約6万4000人の法輪功学習者が臓器の為に殺害された可能性があるとしています。
他の報告*8では法輪功以外も含め、中国での違法臓器狩りの被害者は150万人に上るという推定もあります。
恐ろしすぎる。
陰謀論拡散
ここまでは法輪功の被害者の面を見てきました。
実は法輪功は別の一面も持ち合わせていることも知っておく必要があります。
エポックタイムズと言う名前のメディアがあります。これだけ聞くと一見、米英の新聞？位の印象でしょうが、正式名称は大紀元時報といい、法輪功関係者が発刊しています。
ここまで見てきた経緯から、基本的には、中国共産党を激しく非難する反共内容です。
反共となると、極右からお金が集まります。そして、アメリカの極右はQアノンとかいう陰謀論運動を展開していますね。
もちろん、この大紀元時報も陰謀論に傾倒したトランプ政権をガッツリ支持しております。
で、大紀元時報も陰謀論全開のメディアとして知られています。
あとTV局もやっており、新唐人テレビってのがあります。Youtubeとかで反ワクチン内容のビデオで、ようわからん中国語ニュースで、日本語吹き替えとか字幕になっているのありますよね？それです（笑）
しかし、このメディアは陰謀論を拡散し莫大なお金を築きあげた、”成功したメディア”*9とされています。
▼反ワクチンの正体▼
さいごに
いかがでしたか？
法輪功について学びなおしてみました。
気功ブームの末期に突如現れた法輪功は、瞬く間に学習者が増えました。
その勢いに脅威と考えた中国政府は法輪功を弾圧するようになります。
肉体・精神的な拷問や臓器狩りという恐ろしいことまで行われてきました。
そんなかわいそうな人たちの集まりだけのように見えますが、アメリカで活動する法輪功の人々は、反共・極右・陰謀論メディアで莫大なお金を儲けているという裏の顔もあります。
では、また(^^♪
*1:Cook, Sarah; Lemish, Leeshai (November 2011). “The 610 Office:Policing the Chinese Spirit”. China Brief 11 (17)
*2:James Tong, Revenge of the Forbidden City. Oxford University Press, 2009
*3:https://www.cecc.gov/publications/annual-reports/2009-annual-report
*4:Irons, Edward. 2003 "Falun Gong and the Sectarian Religion Paradigm". Nova Religio, Vol. 6, No. 2, pp 243–62, ISSN 1092-6690
*5:https://web.archive.org/web/20191123153407/https://www.amnesty.org/es/documents/asa17/042/2013/es/
*6:http://www.david-kilgour.com/2008/Apr_21_2008_02.htm
*7:Gutmann, Ethan (August 2014). The Slaughter: Mass Killings, Organ Harvesting, and China's Secret Solution to Its Dissident Problem. Prometheus Books. p. 368.
*8:https://www.independent.co.uk/news/world/asia/china-carrying-out-millions-of-illegal-organ-transplants-annually-report-finds-a7107091.html
*9:https://www.nbcnews.com/news/us-news/epoch-times-falun-gong-growth-rcna111373
