マルチリンガル医師のよもやま話

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BA.2.75 ケンタウロスの正体

第7波に入って、ものすごい勢いで感染拡大が続いています。

メインはBA.5によるものですが、ここ最近日本でも見つかった新たな変異”ケンタウロス”について今回は学んでいきましょう。

ケンタウロス

ケンタウロスって言うのは、ギリシャ神話に出てくる、体は馬で頭は人間という半人半獣の種族のことですね。

今回、新型コロナウイルスの新たな変異亜種にニックネームとしてケンタウロスが使われています。

BA.2.75はケンタウロス

実は、これは正式な名称ではなく、7月1日にある人(専門家でない*1がTwitterで勝手に愛称をつけたのがバズって、いまや世界のメディアがそう呼んでいるよう*2です。

名前の理由は、デルタとかオミクロンとかギリシャアルファベットの名づけ方に飽きたから、というものです。(笑)

今回は、この”ケンタウロス”について学んでいきます。

新変異株ではない

しかし、この"ケンタウロス"はそもそも新たな変異株ではありません。

詳しい人はもうお気づきの通り、BAとついてますのでオミクロン株の1種です。なので、○○株という名称はつけられません

オミクロン株と系統

ウイルスの性質がガラッと変わると新たな『変異株』となります。

性質は変ってないけど、マイナーチェンジ(感染力が強まるなど)したものは『系統』と呼ばれます。

今回の、BA.2.75はBA.2系統(ステルスオミクロン)の亜種のことでした。

では、なぜこのBA.2.75が注目されているのでしょうか。

感染力めちゃ強い

BA.2.75は5月にインドで最初に見つかりました。その後、イギリス、ドイツ、アメリカでも発見され、日本でも検出されましたね。

まずは、日本よりも先に見つかっている英国のニュース*3を見てみましょう。

※注意※ これは、7月13日、つまり2週間ほど前の報道になります。

BA.5よりも感染力強い


BA.2.75は、いま日本で大暴れしてるBA.5よりもさらに感染力が強いとされており、英国でも感染急増の原因となっているのです。これが、この亜種に注目が集まる理由です。

”変異”により既存のウイルスよりも拡散しやすい

要は、BA.2やBA.5と比べて免疫逃避能が高く、感染力がさらに高いということが危惧されています。

すでに医療機関はパンク寸前で、さらに感染力の強いケンタウロスが広がると、いよいよ、日本詰むか。。

そんなに広がっていない

ところが、実態は少し違うようです。

つづいて、7月22日、つい最近の英国での報道*4をご紹介します。

BA.2.75はそんなに広がっていない

実は、騒がれている割に、ケンタウロス(BA.2.75)は世界的に広がっていないのです。

やはり、メインはBA.4やBA.5で、既にBA.2.75が見つかっている国でもその状況には変わりないのです。

インドでは拡大

しかし、インドではBA.2.75がかなり広がっているようです。

インドではBA.5ではなくBA.2.75が拡大

重要なのは、インドの中でもBA.5があまり広がっておらず、ステルスオミクロン(BA.2)が流行していた地域で、BA.2.75が置き換わっているという状況のようです。

これは納得いきますね。だって、BA.2.75ってBA.2から出てきた亜種ですしね。

今のところ、BA.2.75がBA.5を駆逐して拡大しているところはないのです。

インドではBA.2.75のピーク過ぎたか

さらにインドではBA.2.75のピークも過ぎたようで、入院患者や死者の急増も見られなかったそうです。

つまり、BA.5が席巻している日本で、”ケンタウロス”(BA.2.75)に置き換わる可能性もそんなに高くないし、仮にそうなったとしても、入院や死亡は増えないということがわかります。

誇大宣伝

話は戻りますが、BA.2.75がケンタウロスという愛称が勝手につけられ、恐れられているのは、さらなる変異による免疫逃避能が強く、感染力がさらに強いからと言いました。

しかし、実はこれも。

免疫逃避能の根拠はない

今のところ、BA.2.75に免疫逃避能があるのかどうかも分かっていないようです。

そして、構造的にはオミクロン株と同じで、BA.2にわずかな変異があるだけなので、それほど大きな性質の変化はないと考えられます。

ケンタウロスは作られた脅威

ケンタウロス(BA.2.75)にはもう1つ別の愛称が付けられています。それは、scariant です。科学的根拠はないけれど、報道やSNSにより”脅威”に仕立て上げられたもののことです。サル痘と同じ。

サル痘は恐れる必要なし

www.multilingual-doctor.com

さいごに

いかがでしたか?

『国内でも検出』などという報道は、変異株が出てくるたびに目にします。

しかし、今回のBA.2.75については、WHOもVOC(懸念される変異株)にはしておらず、モニタリングのみのVOI(注目すべき変異株)に分類しています。

名前を見ても、BA.2(ステルスオミクロン)の亜種であることは自明ですが、ネット上での拡散や、それをメディアが報道することで作られた、根拠のない脅威であると考えられています。

もちろん、仮に本当にBA.2.75がかなりの免疫逃避能を有しているならば、今後、BA.5を置き換えていくという国も出てくるでしょう。

英国ではBA.5が流行していて、BA.2.75も増えていると最初の記事にありましたね。なので、今後の英国の状況を追っていきましょう。

では、また(^.^)ノ