マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

MENU

【サク読み】アルゼンチンで謎の肺炎出現

アルゼンチンで9人が謎の肺炎にかかり、3人が死亡したという情報が入っています。

新型コロナ以降、原因不明の肺炎や肝炎などのニュースを目にする機会が増えています。それだけ世界中が敏感になっています。

今回はアルゼンチンの謎の肺炎を少し詳しく見ていきましょう。

アルゼンチン

金の化学記号はAu、銀の化学記号はAgです。

これは、ラテン語のaurumとargentumに由来しています。

はい、気づきましたでしょうか?銀の argentum ・・・アルゼンチンと関係アリです。

アルゼンチンは昔はリオ・デ・ラ・プラタと呼ばれていました。これは、スペイン語で『銀の川』という意味です。スペインの植民地でした。

アルゼンチン

19世紀の独立戦争の折に、スペイン語の名前を捨て、ラテン語で『銀』を意味する Argentumに由来して Argentina と名称変更したのです。

首都はブエノスアイレスで、公用語はスペイン語。人口は約4500万人の国です。

さて、本題に入っていきましょう。

アルゼンチンで謎の肺炎

アルゼンチンでは9月1日、副大統領の暗殺未遂があり、そのニュースが世界中で報道されています。その少し前に肺炎のニュースがありました。

英国・テレグラフ紙の記事*1を見てみます。

アルゼンチンで謎の肺炎

タイトルによると、謎の肺炎に9人感染し、3人が死亡したそうです。うむ、致死率高いですね。

非常に狭い範囲で発生

トゥクマン州の1つの診療所で、9人が謎の肺炎にかかったのです。非常に狭い範囲での感染?ですね。これらの患者は、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ハンタウイルスの感染は否定的でした。

コロナ類似の重症肺炎

トゥクマン州の保健省によると、これらの患者に共通するものは、新型コロナによく似た両側性の重症肺炎像だといいます。しかし、コロナは全員陰性です。

コロナ類似の重症肺炎

患者から採取した検体はブエノスアイレスの大きい研究室でさらに詳細な分析を行っているそうです。

分かっていることが少ない

最初の感染者6人の発症が8月18日~22日だったようで、まだ感染者の数も少ないので、
ウイルス感染なのか?それとも環境因子なのか?調べています。

これは、2019年に武漢で『謎の肺炎』が出たときと同じような状況です。

まれなウイルスか?

記事内では英国のウイルス学の専門家の声を紹介しています。

稀なウイルス感染の可能性も

呼吸器症状を引き起こすすべてのウイルスがスクリーニング検査されるわけではありません。頻度が高いものだけが検査されています。

肺炎の原因としてコロナウイルスを調べるようになったのもつい最近(コロナ禍)です。

他の特徴に注意を払うべき

またこの教授は、コロナ対策により他の病原体の感染拡大を抑えられるので、それよりも、他に症状に特徴がないかをしっかりと調べるほうがよいと言います。それが見つかればその対策をすればよいということです。

原因判明

また、新たな感染症が流行るとイヤだなぁと思っていたところ、なんと9月5日、その病原が発見されたという報道*2が出ました。

レジオネラ肺炎だった

よかったです。新型のウイルス感染症ではありませんでした。

レジオネラは細菌で、”水”と関連する場所に増殖します。空調に使われる循環水や、入浴施設で見つかることがあり、エアロゾル感染を起こします。

高齢者や新生児、免疫機能の低下した人は注意が必要です。

レジオネラ症

抗生剤治療で回復しますが、致死率は10%ほど*3と言われています。

さいごに

突然、アルゼンチンで謎の肺炎という報道があったときは、「またか」と嫌な想像をしましたが、調べていくと以前からあるレジオネラ肺炎でした。

抗生剤加療はできますが、致死率は10%と高めです。免疫機能の低下した高齢者などがリスク群になります。

つい先日も千葉県の高齢者施設でレジオネラ症で死者が出ました*4

尚、日本では、温泉などの入浴施設がたくさんあります。それゆえに、厳しい水質調査やダクトなどの検査が義務付けられて*5います。

レジオネラの感染は尿検査で簡単にわかるので、『謎の肺炎』と騒がれるのは不思議ですが、どうやら尿検査では陰性だったそうです。

ま、どんどん広がる感染症でなかったので、ひとまず安心です。

 

では、また(^.^)ノ