よく「40歳の壁」という言葉を耳にします。
40過ぎてから疲れやすくなったとか、病気がちになったとか、やる気が無くなったとか・・・
今回はこの辺、体の変化について*1学んでいきましょう。
人体の複雑な構造
我々人類の体は無数の異なる分子が複雑に絡み合って、機能することで生存しています。
また、我々の体内や皮膚に常在する微生物の力を借りていることも忘れてはいけません。
我々を形作る分子や、共生する微生物というものは「不変なもの」ではありません。
アメリカ・スタンフォード大学の遺伝子学の研究チームが発表した論文によると、これらの分子や微生物はその人の年齢によって構成が異なるようです。
多くの病気のリスクが年齢に応じて一定の割合で直線的に増加するわけではないことが、この研究のきっかけとなりました。
実際、病気のリスクはある年齢層になると急増します。
例えば、アルツハイマー病は60歳を過ぎると急激に増えます。
研究チームは108名の被検者の臓器の加齢性変化、免疫機能について経過を追って調べていきました。
すると、面白いことがわかりました。
40代半ばと60代前半
合計で13万5000以上の加齢に関する分子や微生物についてデータを解析した結果、8割以上の被検者でこれらの体内での組成が年齢とともに徐々に変化するのではなく、ある年齢に達すると急激に変化していることがわかりました。
その年代というのが40代半ばと60代前半です。
この辺りで体内の分子や微生物に『大きな変化』が起こることがわかりました。
どの分子を見ても同様にこのタイミングで変化が起きることもわかりました。
40代半ばといえば、閉経が近づくこともあり、それによりホルモンの変化も考えられましたが、男性もでも同じように40代半ばで変化が起きているので、閉経は主因ではなさそうです。
これからの研究で、なぜこの年代で体内で大きな変化が起きるのかを突き止めることを目標としています。
健康への影響
さて、40代半ばと60代前半に体内で大きな変化が起こることはわかりました。
そのことで、私達の健康面ではどのような変化が起きるのでしょうか。
これらの体内分子の変化により、40代と60代で心血管関連の疾患リスクが上がったり、60代に入れば免疫機能が弱まるということを研究者らは挙げています。
例えば、40代では、皮膚や筋肉に関わる分子やアルコール、カフェイン、脂肪の代謝に関わる分子などに特に大きな変化が見られるようです。
一方で、60代では、40代で変化の見られた分子に更に大きな変化が起きるだけでなく、炭水化物の代謝や免疫機能の調整に関わる分子、心臓や腎臓の調整に関わる分子に大きな変化が起きます。
実年齢と体内の生物学的年齢は大きな乖離が見られるということは、一般的に認められつつあります。
ただし、これらの急な変化は遺伝子でもともと決まったものばかりではないと研究者らは言います。
例えば40代は、責任ある立場に置かれる年代で、親の介護や子育てもありストレスが多い年代で、飲酒量が増えること*2もわかっています。そういった面も、例えばアルコール代謝に関わる分子の変化に関わっているかもしれません。
これらの研究を通じて著者らは健康に暮らすことで、”40代と60代の壁”のリスクを減らすことはできるだろうと述べています。
さいごに
いかがでしたか?
仲の良い方が「40代入ってから体が万全でない」としょっちゅう言っていました。
事実、私達の体内では分子レベルで大きな変化が起きており、体内で共存する微生物のバランスにも変化が起きる年代であることがわかりました。
「自分はまだまだ若くて元気だから大丈夫」という過信は禁物だということですね。
肝に銘じます。
では、また(^^♪