マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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がん保険と郵政民営化

前回はがん保険は本当に不要か?について学びました。

会社員、公務員、個人事業主、独身・・・色々みんな状況が違うので、それぞれに合わせて考えるべきです。

がん保険は不要なのか?

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さて、今回は『がん保険』の裏側ものぞいていきましょ~

闇が深かったり・・・

アメリカの圧力

日本は戦後からGHQによる独占禁止法が徹底されており、保険に関しても例外とならないはずでした。

戦後の復興期は物価上昇が大きく、また現在よりも火事が多い時代で、保険会社の支払いもかなり大きくなっていました。

保険会社には厳しい時代

そんな中で、保険会社も独占禁止法を適用し、新規参入を認め、価格競争が起これば、競争に敗れた保険会社がつぶれるというリスクがあり、国民生活に不利益となると考えられました。

しかしながら、アメリカとしても、戦後 人口が増え、経済発展していく日本の市場は手に入れたいわけで、日本に圧をかけてきて、新規参入を許可する方向にに動かせました。

アメリカの圧力に負け市場開放

郵便局に預金をしている人にとっては、郵便局で入れる簡易保険(かんぽ)は身近な存在でした。また、戦前より逓信省という国の機関がやっていたため『安心感』も大きかったでしょう。

アメリカは、この”かんぽ”の財源にも目を付けていました*1

かんぽマネーを手にしたいアメリカ

要は、民営化されたら株をある程度買い占めて、一定の経営権をもって、その巨額なお金を投資などでアメリカに動かしたいということです。

郵政民営化

2000年前後、小泉政権の肝いりの郵政民営化

1992年に郵政大臣になり、その段階ですでに民営化を主張していたことをまず覚えておいてください。

小泉首相と郵政民営化

郵政三事業と言って、郵便・銀行・簡易保険という事業をやっている郵政を民営化するというものです。

国(逓信省)がバックで安心、さらに全国どこにでも局があり身近な存在な郵貯には350兆円もの貯金があり、それを原資に政府が日本道路公団などに貸し付けて、赤字垂れ流しの田舎の高速道路などをアホみたいに作っていました。

貸し付けて公共事業に使う

こんなことをなくさせるのも民営化のメリットです。

また、民営化により国家公務員を3割も減らせること、民営化後に国は法人税を徴収できるというメリットもありました。

もちろんデメリットとしては、民営化により、収益の低い地域では閉局や、あるいは郵便料金の値上げなどがあります。

で、簡易保険の方も、国がやる保険ということで、信頼度も高く値段も安く加入者も多いんです。

そこのパイを狙ってるやつがいたんです。アフラックです。

アフラック

アメリカンファミリー生命保険、アフラック皆さんご存じですよね。

1958年に世界初のがん保険を作ったのがアフラックです。

作ったのはエイモス家の3兄弟で、父親が癌の闘病しており、その大変さをもとにがん保険を作り、それに特化しました。

1970年、大阪万博に来たエイモス家の長男は、風邪予防にマスクをしている日本人の衛生意識の高さに感銘を受け、日本で初のがん保険の展開を決めました。

アフラック生命保険

ま、日本人の性格なら「がんへの備え」でがん保険が売れると踏んだんでしょうな。

金融界のフィクサーと称される大橋薫という経済評論家の後ろ盾で、1974年に日本での販売許可を手にしました。

このがん保険については、日米の取り決めにより、日本の生命保険会社や損保会社が扱うことは2000年まで禁止されてきました

日米保険協定とアフラック

そのため、日本で最初に始めたアフラックが国内のがん保険市場をほぼ独占(1999年 シェア85%以上)していたのです*2

日本郵政とアフラック

2000年以降、やっと国内の保険会社もがん保険を扱えるようになりました。

さて、民営化後の郵便局でもがん保険に入れるのですが、それは・・・

そうです、アフラックです*3

日本郵政はアフラックと提携を結びました。

一つには、日本でのがん保険市場で圧倒的なシェアがあるからですが、日本郵政としても『がん保険』が儲かることがわかっているので、いずれアフラックを自らのグループ会社にできるように、2020年に2700億円出資し、7%の普通株式を取得しています*4

日本郵政とアフラック

実際、2024年に日本郵政はアフラックを持ち分会社にし、500~600億円の純利益増が見込まれています*5

アフラックとしてはどうでしょうか?

実はアフラックの収入の6割は日本で*6得ています(笑)日本人は世界一がん保険大好き、吸い尽くされてしまっていると言っても過言ではありません。

先ほど書いたように日本でも、がん保険への新規参入が認められたことで競争が激化しており、全国にある郵便局を販売拠点にできるメリットは非常に大きいのです。

これは、楽天モバイルも同じ理由で提携*7しましたよね。

年次改革要望書

ここまで見てきて、日米保険協定など変な圧力がありましよね?

結局日本はアメリカにいまだに縛られているんでしょうな。。。

年次改革要望書というものをご存じでしょうか?

1993年のクリントン大統領の折から、日米でお互い、「こうしてくれたらいいな~」というのを提案し合う要望書です。

で、2009年にアメリカ嫌いな民主党に政権交代したときに廃止されました。

参議院での質問主意書

で、実は1999年のアメリカからの日本への年次要望書に郵政民営化について書かれています*8

アフラックなどが米国政府とともにお願いしたとやら・・・

こうしたことで、ネット上では「小泉首相がアメリカの圧力で郵政民営化し国を売り飛ばした」という主張があります。

小泉氏が郵政民営化を主張したのは遅くとも1992年の時点でしたね?

なので、1994年からある年次要望書などは関係なく、もともと小泉氏はそうしたかったということになりますな。

ま、小泉氏は別として、かなりアメリカから圧力があったれっきとした事実を学んできました。

では、また(^^♪